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やがて君になる 12話 感想 考察 ~侑とプラネタリウム/願いはこの手で掴み取る~


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(それでも あの人を変えたい ------小糸侑)

 

こんにちわ。づかと申します。

屈指の神回となったやが君12話でした。視聴1回目はそのあまりの素晴らしさに言葉を失いました。これまでの積み重ねがあったからこそ、たどり着いた一つの答え。

述べたいことは沢山あるのですが、今回は特に「侑とプラネタリウムの関係性」・「小糸侑という人物について」と、テーマを2つに限定して感想&考察を述べたいと思います。

※本記事はアニメ『やがて君になる』12話までのネタバレを含みます。ご一読の際は、12話まで視聴の上でご覧ください。なお、筆者は原作既読勢ですが、本記事に原作のネタバレはありません。




やがて君になる』12話「気が付けば息もできない」




【目次】
1.侑とプラネタリウム


2.小糸「侑」について

3.ブログ紹介

4.BD/DVD1巻感想




1.侑とプラネタリウム



●OPから見る侑のキーアイテム

12話の内容に触れる前に、まず、侑のキーアイテムとなる「プラネタリウム」が持つ役割についてお話します。

OPでは、それぞれがキーアイテムを手にしています。
・沙弥香はコーヒー
・燈子は姉の写った家族の写真 といったように。


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(OPの侑。プラネタリウムを両手で抱えている)

侑はプラネタリウム(=宇宙)を手にしています。そして、足元が水に浸かっていることもポイントです。足元の水の描写は、これまでの話数でも何度も登場しているように、「海」を示しています。


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(1話/深い海に侑が取り残されている様な描写)


つまりこのOPでは、侑の世界は、「海」・「陸地」・「宇宙」の3層によって構成されていることを示しています。

筆者は、この3層構造を理解することに、非常に困難を感じていました。
・侑が海の中にいる描写は多い。でも、海と宇宙って、とても離れているけれども、どのように繋がるのだろう??
・3話サブタイトル「まだ大気圏」。大気圏ってどこ??

こんな疑問が、作品を見始めてからずっとありました。自分にとって、侑とプラネタリウム(宇宙)と海の関係性を理解することが、最難関の課題としてありました。それが今回の12話を持って、ようやく見えてきました。



プラネタリウムの持つ役割に話を戻します。プラネタリウムからは、「光」が発せられ、天井には「星」が写ります。

侑にとって、「光」は<特別>であり<眩しい>ものでした。「星」もまた、侑にとっては届くことがない<特別>なものでした。また、それ以外にも「星」には<願い><夢>という役割も込められていると解釈します。


・1話:サブタイトル「わたしは星に届かない」
・3話:特別を既に持っている怜ちゃんが星に手が届く
・3話:侑の独白「わたしもいつか届いたりするのかな」と星に手を伸ばすも、流れ星のように手は流れていく
・10話:星に願いごとを届けたいけれど、白紙の短冊を飾る

このように、これまでも星に関する描写は多くありました。

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(3話/怜ちゃんは星に手が届く。侑は届かない。)

整理しますと、
「光」=<特別><眩しい>
「星」=<特別><願い=
となります。



では、「海」が持つ役割はというと、「夢」に対する言葉なので「現実」となります。

侑はこれまで、燈子に対して自分の気持ちを抑え込む場面が沢山ありました。本当は言葉に出したいけれども、燈子と共にいるために何も言えない・・。そんな苦しい現実の様子を、海の中にいる侑という描写で表現していました。

この辺りの描写は9話考察時に詳しく行っているので、併せて読んで頂ければより分かりやすいかと思います。
やがて君になる 9話 感想 考察 ~身が千切れるような侑の心情~ - 三十路会社員のレート奮闘記



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(9話/燈子にキスする直前、踏みとどまった際の演出)


最後の「陸地」について、これも「現実」を示していると判断します。

この考えの基は3話サブタイトルであった「まだ大気圏」です。
大気圏とは、「空気の存在している場所」をさし、宇宙・海ともに、人間は空気を吸うことはできない場所です。陸地のみが空気を吸うことができる場所という点がポイントです。

あの時の侑は、<燈子に対してまだ恋心を抱いていない=海に潜る必要はなく、宇宙に昇る理由もない>ため、どちらにも属していない陸地にいる=「まだ大気圏」となっているのだと。

海・陸地ともに現実ではありますが、海は「現実(恋愛面)」陸地は「現実(恋愛以外)」と差別化することもできそうです。




<宇宙・海ともに空気を吸うことができない場所>という点は、後述しますが、12話サブタイトル解釈の為に非常に重要な要素です。

OPから見る侑のキーアイテムの考察は以上であり、次項よりこれを踏まえて12話を見ていきます。






●星に手が届いた侑

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(こよみに、「劇の結末を変えよう」と提案する侑)


前段が非常に長くなりましたが、ここから12話の内容に触れてまいります。

合宿が終わり、侑の部屋で燈子と2人で過ごしたあと、侑は決断します。
「劇の結末を変えよう」
「七海先輩に自分のこと嫌いじゃなくなってほしい」と。

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侑「誰かにならなきゃ駄目ですか?」
燈子「駄目だよ 
   私のままの私に何の意味があるの」

燈子「私は自分のこと嫌いだから 私の嫌いなもの
   を好きって言ってくる人のこと

   好きになれないでしょ?」

その理由は、燈子との一連の会話にありました。
私のままの私に何の意味があるの→意味はある、だってわたしはどちらの先輩も好きだからと伝えたい。だけど伝える術がない。それなら、先輩が変わるしかない、変わってほしい。


この願いから、侑はこよみに劇の結末を変えようと提案します。劇の主人公が過去を基準に自分の未来を選択することに疑問を感じ、劇中で過ごした時間の中から未来を選択しなければ、この劇の時間に意味がなかったみたいだ、と。この理論はそっくりそのまま燈子と生徒会で過ごした日々にも当てはまります。劇と現実が綺麗に交差し、侑は最後にこう願います。「それでも あの人を変えたい」と。


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このプラネタリウムを抱える描写・演出が神がかっています。もうすごい、ただただすごいです。


OPの項で述べましたが、プラネタリウムが発する「光」・「星」は<特別><眩しい><願い>です。でも、ここでの侑は、まっすぐに光を見つめて、星をその手で掴んでいます。全く眩しそうな様子はありません。ただ手を伸ばして星に届いた、などの優しい表現ではなく、意地でも離さないという位、力強く掴んでいます。

ここで侑は、宇宙に行きました。息もできないくらい、夢中になる願いが見つかったからです。

12話サブタイトル「気が付けば息もできない」はここに集約されていると思います。

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「気が付けば」とあるように、息もできない状態は無意識で至っています。先ほど述べたように、海も宇宙も息ができない場所ではありますが、侑は、海に潜るときはいつも意識的に潜っていました。「これ以上はダメだ」と、我慢せざるを得ない状態でした。

でも今回は違います。
これまで、侑の独白と発せられる台詞・行動は一致していないケースが多かったですが、今回は100%侑の本心からの言葉・行動です。

この一連の描写の凄い所は、侑が陸地に足をつけたまま、宇宙にあるはずの「星=夢・願い」の象徴であるプラネタリウムを抱えている動きです。絶対に陸地(=現実)に夢を持ってくるんだという、侑の決意の強さがこれでもない位に感じられます。



また、この描写は、もう1つ意味があります。侑がプラネタリウムを持つ直前に、写真を見つめる燈子が映し出されます。

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(姉の写る写真を見つめる燈子)

光の当たり方が真逆です。侑がこよみに言ったように、燈子は「過去を基準にして未来を選択する」様子がこの1コマで伺えます。それぞれのキーアイテムに対する描き方が簡潔かつ巧みに対比されています。



●燈子がプラネタリウムに触れられなかった理由

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侑がアイスを取りに行っている間、燈子はプラネタリウムに触れようとしますが、侑が部屋に入ってきたことで未遂に終わります。ここまで述べてきたように、「プラネタリウムが持つ侑の願いは、燈子にとって受け入れられないものだから」ということがその理由です。燈子から貰ったプラネタリウムですが、もう、侑独自の想いが育っている訳ですね。


侑とプラネタリウムに関する考察は以上になります。



2.小糸「侑」について

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侑が優しい子だなあ、という感想を本項にて行います。

「侑は私のこと好きにならないでね?」と言われても、先輩には聞こえないように「ばーか」と返す侑。本当にいじらしいです。人によってはキレてもおかしくない場面です。でも、侑はキレ方が非常に理性的でした。

「自分が好きと伝える前に、先輩に変わってもらわなきゃ」と。

この想いには、侑のエゴもありますが、それと同じかそれ以上に、「先輩に自分のことを嫌いにならなくなってほしい」という願いもあるのではないかと個人的に考えています。自分の気持ち優先か燈子の気持ち優先かという問題ですね。

どちらの気持ちが強いのかは誰にも分からないですが、過去の侑の人物像から推察してみます。


・侑は自分のことでは優柔不断
→1話で入る部活に悩んでいる侑に対して、こよみが「ほんと優柔不断だなあ..」とぽつり。
→10話で菜月と買い物したとき、「侑決めるの遅い」とばっさり。

・侑は他人のことでは決断が速く、力を発揮する
→3話の応援演説
→6話の「本当は寂しいくせに!」の切り返し
→8話の朱里の送り出し(自分は傘を持っていないのに)
→10話菜月「誘われて入ったソフト部であれだけ頑張れるのが侑のすごいところ」

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(中学時代の侑。勝っても負けても泣かなかった)

・小糸「侑」という名前

【侑】の意味は?名付けのポイントを徹底解説! | 一期一名(いちごいちな)
「侑」は「勧める」「助ける」の意味をもつ漢字です。


名前の意味にあるように「侑」という漢字には「助ける」という意味があるそうです。
燈子を変える=燈子を助けるということには直結しませんが、それでも侑は燈子のことを何とかしたいと考えているはずです。

そのため、侑はやっぱり自分の気持ちよりも、燈子のためを想って行動しているのではないかと、個人的には感じています。

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こよみと話すために、侑が家から飛び出して走っていくシーンは、とても感動しました。あれだけ言葉を閉じ込められているのに、我慢ばっかさせられているのに、それでも先輩のために夢中で何とかしようと走る侑の健気さに胸打たれました。

燈子にきみが好きになった女の子はほんと優しい子なんだからほんと大切にしてあげて、マジで。と言いたいです。





●踏切での光について

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最後に、踏切場面での光の演出について言及して、本考察を終えたいと思います。

合宿からの帰宅途中の踏切で、燈子は侑に「どうする?」と問いかけて、侑は「待ちましょうか?」と答えました。侑は燈子を見つめています。その直後、電車が通過して、2人に光がかかります。

・言葉のやり取りについて
→侑が「待ちましょうか」と言ったことから、侑の方が燈子と一緒に帰る時間を惜しんでいた、と捉えています。また、この段階では侑は燈子から、燈子の悩みについて何も話を聞かされていないため、燈子の方から切り出せる時間を用意したかったのかもしれません。

・光の演出
→この光は、OPで発せられている侑のプラネタリウムと同じ光源に見えます。

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(OP/侑が持つプラネタリウムから発せられる光)

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(2人の間を通過する光)

本記事で繰り返し述べているように、この光は<特別>なものです。それを2人が平等に受けていることから、「2人とも、もう特別を知っている」ということが分かります。侑も眩しそうな様子はありません。

また、2話と同じく時が止まるような演出があり、そこから2人のこれまでの思い出深い出来事が次々に映し出されます。これらの演出を電車を用いて行ったことは、以下3点の意図を感じます。

①2人の最初のキスがこの踏切だったため、重要な出発点であること。
②2人のこれまで軌跡(=ある人や物事がたどってきた跡)と、軌跡(=車輪の通った跡)をかけていること。
③電車が通り過ぎるのはほんの一瞬であり、あっという間に過ぎ去ってしまうこと。すぐに過去になってしまうこと。


というように、鮮やかながら非常に切ないシーンに感じました。2人のこれまでの軌跡の振り返りも感じることができ、最終回前の1話を印象付ける素晴らしい一幕でした。



考察については、以上になります。いよいよ、アニメの最終回も残すところあと1話までやってきました。侑の願いを受け脚本はどう変わるのか、燈子の反応など、最終回も目が離せないものになりそうです・・・!!






3.ブログ紹介

www.anime-kousatsu.com
いつもご紹介させて頂いている、ゆっちーさんの記事です。
3話時点の考察から、「まだ大気圏」→「気が付けば息もできない」を予見されています。原作未読なのに恐ろしいまでの先読みの精度です。また、十字路に関する考察が、自分には全くない発想だったのでとても楽しく読むことができました。

yagakimi.hatenablog.jp

こちらもいつもご紹介させて頂いているygkmさんのブログです。侑のいる場所を、「宇宙」・「海中」と表現し、それを「呼吸ができない場所」「身動きができない場所」と表現されていた部分は、自分ととても似た解釈だったので、とても楽しみながら見ることができました。ygkmさんも十字路の部分に着目されていて、それを「十字架」に見立てて解釈されていた部分が驚きでした。

ゆっちーさん・ygkmさんの記事いずれも、最終回前ということでとても濃密な内容になっていますので、まだ読まれていない方は是非ご覧ください!!

ブログ紹介は以上です。



4.BD/DVD1巻感想

先日発売されたBD/DVD1巻の感想を簡単に。

◆BD、画質めっちゃ綺麗でした。当然なのかもしれませんが、放送時より綺麗に見えて、特に背景や夕陽の光などが映えているように感じました。

◆絵コンテがすごい。加藤監督が書いた絵コンテが、第1話分まるまる掲載された絵コンテがあるのですが、これの情報量がすごかったです。少しだけ話をしますと、冒頭でタイトルが出る場面で監督のメモに「タイトルにアニメーションつくと嬉しい」と一言要望メモみたいのがあるのですが、実際はあんな綺麗なモーションがついて(最後にBloom into youが浮かぶのもお洒落)、監督の要望を超えてくるスタッフの方もすごいなと。

あと絵コンテは秒数とかも刻み込まれたりして、絵も巧いし、監督って仕事はなんでもできるスーパーマンみたいな人なんだなというのが分かりました。

◆スタッフコメンタリー
こちらも加藤監督と、原作者の仲谷先生がコメントしてくれているものがあるのですが、個人的には仲谷先生の肉声が聞きたくて、BD開封後第3話コメンタリーを真っ先に見た次第です(笑)先生の印象は作品通りロジカルな雰囲気が伝わってきました。最初はとても緊張していたかと思いますが、その後は普通に話されていて心臓つよと思いました。加藤監督との信頼関係もすごくあるんだなーということが伺えるコメンタリーでした。

 

見る度に気付かされる部分が沢山あったり、「あの人の考察はここに繋がっているのか」という、他の方の考察を読んだからこそ分かる部分もあったりと、今回考察を行うに当たっても非常に役立つ部分がありました。特に1話~3話というのは伏線も多いですし!!

 

この冬のおともに、是非ともオススメしたいです。


ではでは、今回は以上となります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。次回は最後になりますが、よろしくお願いします!!

 

 

 

 

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