【考察記事】アカシア&過去曲を通じてBUMP OF CHICKENを布教します!【ポケモンMV GOTCHA!】
【Official】Pokémon Special Music Video 「GOTCHA!」 | BUMP OF CHICKEN - Acacia
ポケモンとBUMPOFCHICKENのコラボMV:『GOTCHA!』が公開されてから3週間ほどが経過しました。2020年10月21日現在の再生回数は1500万回を超え、勢いは衰えていません。
本記事では、MVを通じて、初めてBUMPの音楽に触れた/何回かBUMPの歌は聞いた事があるけど、そこまで詳しくは知らないという方へ向けて、『アカシア』の考察を通じて彼らの楽曲をもっと知って欲しい!という目的で記事を書いております。
本記事を通じて、MVがより楽しめたり、BUMPの楽曲に興味を抱いてもらえたら幸いです。どうぞよろしくお願いします。
■そもそもBUMPってどんなバンドなの?
→千葉県佐倉市出身の4人組バンド。全員同じ幼稚園に通っていました。正式にバンドが結成したのは1996年2月11日。結成から25年目にあたり、1996年2月27日に緑・赤が発売されたポケットモンスターとは、年がとても近い同級生になります。
→メンバー
・ギター&ボーカル:藤原基央 作詞作曲
・ベース:直井由文
・ギター:増川弘明
・ドラム:升秀夫
■BUMPはどんな歌を歌っているの?
①25年間、ずっと『今』を歌い続けている
②日記的な楽曲は少ない。聞き手が、作り手の背景や思いに捉われない、普遍的な楽曲作りを目指し続けている。
③いつだって『君』1人に向かって歌い続けている。沢山の人に自分達の歌を届けたいと思っているが、自分達の歌がマジョリティ(多数派)に向かってではなく、マイノリティ(少数派)に向けて歌っていると考えている。
④『終わり』や『別れ』をテーマにしている楽曲がとても多い。『終わり』とは「死」や「夢を諦めること」「成長して子ども時代の幼さに別れを告げること」など様々。その切なさや、終わりがあるからこそ生まれる希望を描く楽曲たちに心揺さぶられるファンが多い。
以上のような特徴が挙げられます。
本記事では、このような特徴の中でも、特に④の部分にスポットを当てて、それらの歌詞が特に顕著な楽曲や、メジャーな楽曲をいくつか紹介していきます。
この④の特徴が、今回、『アカシア』という楽曲をより知ること・BUMPの楽曲を知ることに繋がる大事な部分かと思いますので、力を入れて書き記していきます。
※※ご注意※※
下記をはじめ、楽曲の解釈は著者本人のものであり、解釈の仕方は人それぞれかと思います。これが正解という訳ではなく、聞いた方それぞれの感想や思いが正しいかと思われますので、その点ご理解いただければと思います。
歌詞を全文ではなく、一部を抜粋して紹介しているため、気になった楽曲は、是非ともフルで聴いていただければ幸いです。BUMPが公式にPVをYouTubeにアップしている楽曲については、紹介とともにリンクを掲載しておりますので、併せてご確認ください。
また、紹介している詞は、全て藤原基央さんが作詞されたものになります。
※※ご注意終わり※※
【1曲目】
■天体観測(収録アルバム:jupiter)
《僕は元気でいるよ心配事も少ないよ
ただひとつ今も思い出すよ》
《予報外れの雨に打たれて泣きだしそうな 君の震える手を握れなかったあの日を》
《「イマ」というほうき星 今も一人追い
かけている》
→言わずと知れた彼らの代表曲です。ポケモンで言えばガブリアスのS種族値が102であること、みんな知ってるよね?というのと同じくらいのメジャーさかと。
→楽曲は、昔ともに遊んでいた君と別れて、僕は一人、架空の「イマ」(カタカナで表記することで、歌詞中の「今」=現実と、異なる架空の世界であることを表現している)を追いかけ続いているという、切ない歌詞になっています。
→本記事内、アカシアの考察で後述しますが、この「手を握れなかった」という部分を、よかったら頭の片隅に入れて置いてください。
【2曲目】
■ray(収録アルバム:RAY)
《お別れしたのはもっと前の事だった
ような》
《お別れしたのは何で 何のためだったん
だろうな 悲しい光が僕の影を 前に長く
伸ばしている》
《お別れした事は 出会った事と繋がって
いる》
→とてもポップな明るいメロディラインから、なかなかに暗い歌詞とのギャップ・温度差がベストマッチングな、BUMPの代表曲の1つです。歌の最後では《生きるのは最高だ/誤魔化して笑っていくよ》と、悲しみを背負いながらも笑顔で前を向く姿が印象的です。楽曲に触れてみると、この曲の温かさに必ず気付けることと思います。
→初音ミクとコラボレーションした映像が、当時非常に話題になりました。彼女が映像の中でダンスしているように、この楽曲は踊りたくなるようなメロディラインが本当に素敵です。歌詞・映像ともにぜひともフルで触れて欲しい一曲です。
BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」LIVE MUSIC VIDEO
【3曲目】
■Happy(収録アルバム:COSMONAUT)
《悲しみは消えるというなら
喜びだってそういうものだろう》
《どうせいつか終わる旅を
僕と一緒に歌おう》
→個人的に一生忘れないであろう、忘れたくない、勇気を貰った2つのフレーズです。これもまた、陰と陽の割合バランスが絶妙すぎる楽曲。「傷ついたこと、何か大事なものや人を失った悲しみは、きっと生涯なくなることなく、抱えていくことになる。でも、それなら、喜びだってそうでしょう?喜んだこと、嬉しかったことだって、一生無くならない。消えないんだよ。」と歌うこのメッセージに、どれだけ救われたか分かりません。
→どうせいつか終わる旅=人生はいつか終わる 一緒に歩いて行こう と寄り添ってくれるメッセージにも、勇気を貰います。ちなみに、作詞作曲の藤原さんにとって『一緒に』という言葉を用いることは、本当に難しかったそうです。理由は、「一緒に頑張ろう」とか「一緒に○○しよう」って言葉には責任とかすごい感じちゃうし、人から言われてもなんか色々考えちゃうし、との事(2010年時点のインタビュー雑誌より)。それくらい作り手本人も繊細な言葉で、勇気のいる言葉が、『一緒に』という言葉でした。
【4曲目】
■ジャングルジム(収録アルバム:auroraarc)
《ここまでおいでって言ったのが
遠い昔の事になって
あの日遊んだ友達の
名前も怪しくなってきて
どんな時でも笑えるし
やるべき事もこなすけど
未だに心の本当は
ジャングルジムの中にいる》
→最新アルバム「auroraarc」より。ここまでの楽曲のような、直接的な人とのお別れの歌ではありません。大人になって電車に揺られながら、ふと帰り道に子供のころの情景を思い出す、振り返る。大人になっても、未だに心の大事な部分は、あの頃のままだよという、非常にノスタルジックな名曲です。
→このように、大人になってから子どもの自分へのメッセージや、子ども時代の気持ちへの終わり・お別れを歌う楽曲は他にも『R.I.P』・『魔法の料理〜君から君へ〜』などがあります。
【5曲目】
■新世界(収録アルバム:auroraarc)
《もう一度眠ったら 起きられないかも
今が輝くのは きっと そういう仕掛け
もう一度起きたら 君がいないかも
声を聞かせてよ
ベイビーアイラブユーだぜ》
→同じく「auroraarc」の終盤に収録されている曲です。僕たちは大事な人・大切な人に出会ったら、その瞬間から、「(君は)いなくなってしまわないだろうか」という不安と、ずっと隣り合わせで生きていくことになります。だから、君の声が聴きたい・アイラブユーだぜ!と恥ずかしながらも大きな声で何度も伝えます。この曲も、とてもポップで、ライブで聴くとみんなで手拍子しながら歌える歌です。聴いていて心が弾んでくるような曲です。
→MVの制作スタッフは、『アカシア』と同じく松本理恵さんが監督し制作をされています。BUMPは松本監督とアニメ『血界戦線』でもタッグを組んでおり(血界戦線のOPがBUMPの『Hello,world!』でした)、今回のアカシアのMVでは三度目のコラボレーションとなります。新世界のMVも素晴らしい映像・楽曲になっていますので、チェックしてみてください。
ロッテ×BUMP OF CHICKEN ベイビーアイラブユーだぜ フルバージョン
以上、5曲を紹介させていただきました。
他にも紹介したい名曲がキリがないほどありますが、一旦ここまでとさせていただきます。
いずれの楽曲も、歌詞の一文だけを切り取ってしまうと、暗い印象だけを持ってしまうかもしれませんが、楽曲をフルで聴いてみたり、歌詞を全体で追っていくと、その暖かさや奥深さに触れられると思います。
■新曲:アカシアの解説
ここからは、「GOTCHA!」で流れた新曲、アカシアについて解説を行なっていきます。
歌詞を追っていきますが、フルではなく、MVで流れた部分に限定して進めます。
・前奏〜《透明よりも綺麗な あの輝きを確かめにいこう そうやって始まったんだよ
たまに忘れるほど強い理由》
→「透明よりも綺麗な」の歌詞と呼応するように、透き通ったピアノの音が響き、どこか懐かしいメロディーのギターが流れます。子どもの頃、かけっこで一等賞を取ったときのような、初めて雪を踏みしめた時のような、幼い感動、何者にも縛られない自由な感情から歌が始まります。ポケモンでいうと、初めてモンスターボールでポケモンを捕まえた時・バトルに勝った時のような、原始的な喜びの感覚でしょうか。
・《冷たい雨に濡れる時は 足音比べ
騒ぎながらいこう
太陽の代わりに唄を
君と僕と世界の声で》
→「雨が降っている=曇り空=太陽は見えない」となりますが、君と歌を唄っていれば、太陽がなくても大丈夫、ということかと。
・《いつか君を見つけた時に
君に僕を見つけてもらったんだな
今 目が合えば笑うだけさ
言葉の外側で》
→君と僕が出会った過去を思い出しながら、今お互いは成長し、言葉を交わさなくても気持ちが分かる信頼関係が築けていることが伺えます。
・《ゴールはきっとまだだけど
もう死ぬまでいたい場所にいる
隣で(隣で)君の側で
魂がここだよって叫ぶ
泣いたり笑ったりする時
君の命が揺れる時
誰より(近くで)特等席で
僕も同じように 息をしていたい》
→サビです。サビの一小節目が、めちゃくちゃ大事です。というのも、ここで初めて、「ゴール」「死ぬまで」とBUMPがこれまでも歌ってきた、「終わり」に関係するフレーズが出てくるからです。紹介してきた楽曲と異なる点は、「ゴールはきっとまだだけど」→実際にゴールは知らないもの・「もう死ぬまでいたい場所にいる」→これは「今」の僕の願い・願望ということです。あくまで時間軸は現在形で進んでいます。
これまでの楽曲は終わりを意識してそこから逆算し希望を見出す手法や、既に終わりや別れを経た後の状態の楽曲が多かったので、この点は大きな違いかと思います。⏩アカシアは現在形の楽曲であるということ⏪
アカシアという曲は、この後も一貫して、終わりの後を考えない・ただひたすらに、「君の隣にいる今、君の隣に居続けたい今」を歌い続けている歌詞になっています。
※歌詞中の「特等席」の場所について、もしかしたら隣ではなく真正面から向き合う解釈もできるのかな、と考えましたが(ガラルチャンピオン戦のエースバーンとリザードンが対峙している場面のように)、歌詞中でも何度も「隣」と歌われているように、またMVのラストシーンで男の子と女の子が隣で歩いている様子から、特等席の位置は「隣」でやはり良いのかなと思います。
・《あの輝きを 君に会えたから見えた
あの輝きを 確かめに行こう》
→MV版ではBメロが編集され除かれていますが、それの後、最後のサビの溜めとなる部分です。Aメロで出会った輝きを確かめる、最初は幼い原始的な欲求であったもの、夢としても解釈できるかもしれません。その夢を、現実のものにしよう。手に入れようと君に促しています。チャンピオン戦直前の様な雰囲気でしょうか。
・《どんな最後が待っていようと
もう離せない手を繋いだよ
隣で(隣で)君の側で
魂がここがいいと叫ぶ
そして理由が光る時
僕らを理由が抱きしめる時
誰より(近くで)特等席で
僕の見た君を 君に伝えたい
君がいる事を 君に伝えたい
そうやって始まったんだよ》
→ラストのサビです。「どんな最後が待っていようと」ここでも、「終わり」を想起させるフレーズが出てきますが、サビ1回目と同様に、歌っている時間軸としては、あくまでも「今」で固定されています。そして、僕は君の手を取ります。ここで思い出していただきたいのが、紹介した楽曲の1曲目『天体観測』では、この手を繋ぐことができなかったことを、「僕」はずっと後悔し続けています。もちろん、天体観測の僕とアカシアの僕は同一人物ではありませんが、誰かの手を触れること、握ることを臆病に感じることが多いBUMPの曲の中で、アカシアの僕の迷いのなさは、かなり珍しい部類の「僕」になっています。
また、サビ1で「魂がここだよって叫ぶ」=精神が先行した状態・魂に案内されている状態から、ラスサビでは手を取った上で「魂がここがいいと叫ぶ」と、肉体と精神の行動が一致していることも、「僕」の成長を強く感じます。
「そして理由が光る時 僕らを理由が抱きしめる時」は、まさにチャンピオンになった=夢が現実になった瞬間なのかなと思います。その瞬間の君を見る僕の位置はまさしく特等席であり、君のおかげでここまできたことに触れて、その始まりに想いを馳せながら歌は終わります。
■アカシアのまとめ
🔹めっちゃ青臭い、若さが溢れる曲
→何度か触れているように、アカシアの僕は、君と別れることやその終わりを、朧げにしか感じていません。「君の命が揺れるとき」「どんな最後が待っていようと」と、解釈次第でネガティブにもポジティブにも取れる、非常に繊細な言葉選びをし、具体的な終わりのイメージから距離を取る表現をしています。僕は、愚直なまでに君の隣にいることを望み、願い続けています。
→BUMPのこれまでの曲を知っていると、それらが絶妙な対比となって、この曲の力強さ・眩しさ・そして少しの危うさを感じます(この曲の僕、今までの僕に比べて強すぎない?とか、君視点の言葉がないから、君の本当の気持ちが分からない、君は僕で大丈夫かい?とか、余計なお世話な気持ちがつらつらと)
🔹自由な曲であること
→この曲の出発点は、初めてポケモンの世界に触れた時のような自由な感覚です。BUMPのこれまでの曲では「嵐の中をここまできたんだよ」・「気付いたらもう嵐の中で帰り道がわからなくなっていた」・「ここでしか息が出来ない何と引き換えても守り抜かなきゃ」など、そこに至るまでに他に選択肢がなかった、気付いたらもう引き返せなくなっていたのような曲もあります。アカシアの僕は、そのような先天的な縛りはなく、極めて自由な状態で、君の側にいることを選択しています。ここからも、この曲の持つ純粋さと、自由度・透明度の高さを感じます。
■MV視点でアカシアを、そしてポケモンというゲームを考える
最後に、MVの映像に触れながら本記事を終えたいと思います。
MVの考察(どんなポケモンやキャラクターがどこに登場しているか、それぞれの演出の意味)は、こちらの記事に網羅されているので、ご一読ください。改めて情報量の多さとアニメーションの素晴らしさが分かります。
また、他のMV考察で感動したものが、以下の内容です。
(具体的な記事の出典が思い出せず、引用できず申し訳ありません。Twitterかnoteで見たような気がするのですが、もしお分かりになる方がいらっしゃいましたら教えてください)
考察内容を要約すると、男の子側は初代世代のプレイヤーで、女の子側がピカブイ世代のプレイヤーである、というものです。
ポケモンの魅力の1つに、「対戦」があります。今も、著者含めて多くのプレイヤーがポケモンランクマッチ(ガチ対戦)に勤しんでいますが、その特徴の1つに「年齢は関係ない」というものがあります。
その人にどんな事情があろうと(例えば大学生だったらレポートや就活があったり、社会人であったら仕事や家庭の問題があったり)、ポケモン対戦においてはそういう日常から離れて、誰もが対等なポケモントレーナーになれるからです。純粋にどっちがポケモンが強いか、ただそれを競うゲーム。
もし、MVの男の子が考察のように、ポケモン初代世代の暗喩であるなら、またアカシアの歌のような若くて純粋な気持ちを持ってよいなら、「大人になっても、いくつになっても、ポケモンを、ポケモンバトルを楽しんでいいんだよ」というメッセージとも受け取れるMVであり、すごく励まされます。
MVの最後で、男の子と女の子は、博士や御三家に見送られながら、旅に出ます。ラストシーンでは、彼らは一度も後ろを振り返りません。冒頭のジムリーダー達が映る場面ではあちこちに視点が慌ただしく動いていますが、ラストシーンでは前だけを向いています。
また、太陽の光は画面右側から当たっていることや影の位置、ポケモンのマップは基本的に南から始まるので、ラストシーンの時刻は朝で、北に向かって物語は始まっているのかと考えられます。
MVの物語は始まったばかり!
それを見ている僕らの物語も始まったばかり!
ポケモンもBUMPも始まってから24年の歳月が経ちました。だけど、彼らの物語も、まだまだずっと続いていく。
という、本当に沢山の希望に満ちたMVであり、改めて、ポケモンとBUMPがコラボレーションした今回の作品に、多大な感謝と尊敬を込めて本記事を終わります。
長文を読んでくださった方、ここまでありがとうございました。
今回のコラボを機会に、BUMPの音楽に触れてくださる方がいらっしゃいましたら、とても嬉しいです。
※BUMPの音楽どうやって聞けば良いの?って疑問ですが、
・記事中であげたようにYouTubeのBUMPのチャンネルがあるので、そこである程度のMVは無料で視聴できます。
・オススメなのが、Amazon musicでunlimited会員(月額980円または780円)に入ること。→多分BUMPのこれまでの楽曲の85%以上の曲は聴けるかと思います。
・スマホ等の各サイトから購入
・CDショップでレンタル、購入
等でしょうか。
何か感想・ご意見等ありましたら、Twitter「づかぽけ@duka_poke」までお願いします。
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