アニメとテニスとポケモン大好きおじさんの徒然ブログ

ポケモン・テニス・アニメを中心に。雑多なブログ。

舞台『やがて君になる』感想&原作完結までの過ごし方

 

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こんにちは。づかと申します。

2か月ぶりの記事更新となります今回は、①舞台「やがて君になる」の感想と、②原作完結までの過ごし方をまとめていきます。

※本記事は①②の内容ともに、舞台の内容・原作第40話・アニメ第13話まで・スピンオフ小説「佐伯沙弥香について(1)(2)」までのネタバレを含みます。その全てをご覧になられた上で読まれることを強く推奨します。
※②については非常に個人的な内容になっているため、②についてはご興味がありましたら読んでもらえれば幸いです。






①舞台『やがて君になる』感想

では早速舞台の感想から。


◆構成の巧みさについて

2時間という限られた時間の中で、とても、とても綺麗な形で、原作やが君の世界観を再現された公演でした。原作が持つ繊細な雰囲気を全く損なわず、またダイジェストにならないよう計算し尽くされた構成だったと思います。舞台初観劇の自分でしたが、長いとも短いとも感じず、パズルがピタッとはまるように結末まで楽しむことができました。

「生徒会劇までやる」という話をTwitterで見て、「本当にそこまでできるのかな?」と思いましたが、まったく不要な心配でした。


◆キスについて

侑と燈子のキスは1公演につき6回。その全てを実際に行っていたと、侑役の河内さんから、公演終了後に発表がありました(これもTwitterでとても話題になりましたね)。

僕の席は前から2列目のA席でした(5月8日水曜日の昼公演)。ホールを上から見ると、左上隅の位置。そのため、舞台の全体を見ることはできませんでしたが、角度がついている座席のため、正面からは見えないような演技も見える位置でした。

なので、見れました。2人がキスしているのを、しっかりと・・・!
※(えっ、キスしてる!でも、そうか。舞台だもんな。そうだよな・・。)とすぐに受け入れた僕をどなたか説教してください。キスしているふりだけの公演も多いんです。

特に河内さん・小泉さんのプロ意識の高さに驚くのが、雨宿りの場面の【傘の中でのキス】でした。
この場面、正面からは<傘を客席に向かって倒す>という巧い演出に阻まれて見ることができません。そして、角度のついている端の席(僕のいた席など)からは、傘の内側を見ることはできますが2人の後頭部しか見えないため、こちらからもキスしているかを確認することはできません。

だから、あの時、2人がキスしているかを確認できるのは、主演2人だけなんですよね。あの瞬間はまさに、舞台の真っ只中で行われる【誰にも言えない、2人の特別】な時間が流れていました。

河内さんのツイートを読んでこのことに気が付いて、お2人のプロ意識の高さと、舞台だからこそできる空間演出の妙に鳥肌が立ちました。舞台ってすごい・・・(エコー)



◆キャストについて

◎小糸侑(河内美里さん)
感想でも多く見られるように、舞台で一番印象の変わった役ではなかったかと。
原作/アニメと比較して感情表現がより豊かになっていました。でも、特別を知らず、特別を求める侑はそのままそこにいて。

燈子に振り回されて、それでも燈子を「変えたい」という願いを持って奔走する侑が見れました。特に生徒会劇直前の屋上での、侑と燈子の魂のぶつかり合いは、畳みかけるような言葉の後に、しっかりと優しく燈子に語り掛けるような緩急がすごかったです。
そして皆さん仰られているように、ナース服が似合いすぎでした(笑)

◎七海燈子(小泉萌香さん)
マジで完璧生徒会長の七海燈子がいた。スラっとした身長、長く綺麗な髪、凛とした声。いやこれ流石に全校生徒から告白の対象でしょう(ささつ2ネタを使っていくう!)。

でも、侑といるときの燈子はまったく違う印象で。17歳という年相応、いやそれ以下のかわいい燈子が沢山見られました。そのギャップが凄かったです。特に「続・選択問題」での「手首、手首かー」とがっくりうなだれる燈子がめちゃくちゃ可愛かった・・。

二面性のある役に加えて、最後には生徒会劇で記憶を失った少女まで演じるのだから、小泉さんの底知れない演技力にもう、ただただすごい・・としか言えないです。

◎佐伯沙弥香(磯部花凛さん)

女 神 が い た 。

とりあえずこの場ではこの一言だけ・・
ささつ2読んだばかりで佐伯沙弥香好きすぎてヤバくて・・・
磯部さん演じる沙弥香(+茅野さん演じる沙弥香)とささつだけで別の記事書けるくらい思うところあるので今はこの一言に留めます😞

◎槙聖司(石渡真修さん)
槙くんマジ槙くん。「人の恋って、本当に面白い!」の場面が余すところなく見れてよかったです。あの時の槙くんは生徒会役員ではなく愉悦部槙くんで、本当に楽しそうで何よりでした。
そして槙くん演じる石渡さんのトークが上手すぎる。アフタートークの面白さ神でした。

◎堂島卓(小田川颯依さん)
堂島ニキは舞台でもマジで癒し。改めて生徒会最後のメンバーが堂島くんでよかったと再確認。舞台では「女子率あがるから歓迎!」の場面のジェスチャーを日ごと(公演ごと?)に変えているそうで、僕が見た日はそのジェスチャーが結構激しかったからか、こよみ役の春咲さんが被害にあったというのが面白すぎました。

◎叶こよみ(春咲暖さん)・日向朱里(五十嵐晴香さん)箱崎理子(田上真里奈さん)・児玉都(立道梨緒奈さん)達の再現度もすごかった。こよみはアニメと声の抑揚とかもおんなじでそんな奇跡ある?と思ったり、朱里と並んで、同級生3人組の場面も多かったのですが、3人の仲の良い空気感を感じたり。

箱崎先生&都店長の大人組の安定感が半端なかったです。2人でイチャイチャされている場面も原作より増し増しで。この2人本当に仲いいなあ、とホッコリすることが多かったです^^


◆生徒会劇について

憶測ですが、舞台「やがて君になる」がここまでの評価を得られているのって、【生徒会劇を完遂した】こともその理由の一つじゃないかなと思っています。本当に、劇のクオリティが高かった。
まず、劇を行うにあたり十分な尺が用意されていました。
・病室で目覚める少女、看護師との会話
・訪れる3人の見舞客(1回目、2回目、スポットライト、3回目、4回目)
・パスワードに関する場面
・看護師の「えいっ!」からの少女を諭す大事な場面
・ラスト「私は私になれるから」
まで、余すところなくしっかりと演じ切られていました。

まさにアニメからその先、「終着駅のその先へ」が、目の前で行われていました。
体育祭でのバトンリレーが決まるような、アニメから舞台へのバトンタッチが見れたような。これが本当に嬉しくて、また感動的でした。

侑の部分でも触れましたが、ナース服の侑が原作そっくりだったことをはじめ、本編のみならず、生徒会劇の衣装も完璧に再現されていました(槙くん堂島くんの他校の制服・病室の燈子・恋人役の沙弥香)。それがより生徒会劇のリアルさを一層際立たせていました。

原作にあるように、この劇は「やがて君になる」という物語において、燈子の変化を生み出す、非常に大きな出来事です。それを舞台のスタッフの方々が汲み取って、大切に、丁寧に取り組んでくださったことが、目の前でこの劇を観ることで痛いほど伝わってきました。原作を読んだからこそ、アニメを見たからこそ至れた不思議な境地にたどり着くことができました。


※アニメの話に逸れますが、アニメが劇中作まで行わなかった理由として、アニメの監督:加藤誠さんはやが君ラジオにゲスト出演された際に、こうお話しされていました。

(要約)劇まで行わなかったのは、尺の都合もあるが、劇をやってしまってアニメが終わると、それは燈子の物語として終わってしまうから。それはやりたくなかった。【侑と燈子の物語として終わらせたかった】それには水族館の場面で終わることがベストであり、最初からそのつもりだった。
※この部分は記憶を基に書いているので、監督の言葉からズレた要約でしたらご指摘ください※


と。僕はこのお話に1000%賛同しています。アニメのエンディングはベストだったと信じて疑いません。

加藤監督は観られたか不明ですが、アニメスタッフの方々が舞台を観られていたことも印象的でした。寿さん・高田さんはじめ主役の声優5名や、キャラデザの合田さん・OP主題歌を歌われた安月名さんは観に行かれたそうで、何て素敵なメディアミックスなのかと・・。
特に、寿さんと会った小泉さんが泣かれたというエピソードが凄く好きで。「超高難易度」と言われる七海燈子を演じられた、お2人だけしか分かり合えない世界があるのかなと。

舞台の方はなぜ生徒会劇まで行うことができたか、という点は次項にて。


◆結末について

舞台オリジナルの結末がありました。
侑が特別に近づいて、知って、それを行動に移す。
舞台を経て自身の変化を感じ、受け入れた燈子は、侑にも「変わってもいいんだよ」と告げる。それを受けて侑は燈子に「好きです!!」と特別な気持ちを伝える。

このように舞台版やが君も、【侑と燈子の物語】として非常に力強い結末を迎えているんですよね。だからこそ、あの生徒会劇を行うことができた。

なぜ燈子が侑の気持ちを受け入れることができたか、原作との相違点は、こちらのブログが非常に参考となりましたので、リンクを貼らせていただきます。

rgrey127-diary.hatenablog.com



(僕は初回でこの結末を見たときは、生徒会劇を観れた感動と、「侑、よかったね・・」と思うのが精いっぱいで全く考察に頭が回りませんでした。この結末を知ったうえで舞台を最初から見ると、より一層楽しめたことは間違いないので、2回目を観れなかったことをすごーく後悔しています。)



◆舞台の感想まとめ

・拡張されるやが君界
原作7巻のあとがきで、仲谷先生が、ご自身のやが君に対する思いを言葉にしてくれていました。その中で使われた「やが君界」という言葉がとても印象的でした。アニメを通じて、それが自分のものだけではなく、クラウド的な存在だと分かった、とも仰っていました。

アニメと同様に、舞台もまさに【拡張されたやが君界】だと僕は思いました。まさに2.5次元、もっと言うと限りなく3次元に近いところにやが君の世界がありました。僕たちがこれまで平面の世界だけで接していたものに近づけたような・・・。

舞台の魅力って、こういうことなんですね。
頭ではなく、心で理解することができました。


・キャスト、スタッフの方々への感謝
この舞台を作ってくださったキャスト、スタッフの方々へ心から感謝します。ありがとうございました。はじめての舞台鑑賞がこの舞台で本当に良かったです。

特に再三申し上げていることですが、衣装が完璧でした。制服もブレザー・長袖・半袖と3パターンあり、季節感がすぐに分かりました。ちなみに僕は服装の変化は全て沙弥香を見ることで判断していました。

また、Twitterでの情報発信も非常にタイムリーでした。
▲当日のチケット情報
▲物販の在庫状況
▲公演観覧に際しての注意喚起...etc
こういった一つひとつの丁寧さが、ありがたかったです。

最後にキャストの皆さんですが、公演前・公演後に皆さんのコメントにあった、「今日も〇〇(役名)とともに生き抜きます」という言葉がとても印象に残っています。キャストの皆さんが、全力でそれぞれの役と向き合い、切磋して、命を懸けて舞台に臨んでいることが伝わってきました。【職業:役者】の凄さを実感しました。

舞台は終わってしまいましたが、物販やBDの発売もありますので、それを楽しみにしたいと思います。(BD等の予約はこちらから↓↓ 僕も予約しました!)

www.shop-ep.net

・BD/DVDともに特典としてアフタートークやバックステージ映像があるようです。アフタートークの面白さは尋常じゃないので楽しみすぎる!
・5/3~7/31までに予約すると、早期予約特典として千穐楽カーテンコール千穐楽後のキャストコメントを収録したDVDがつくそうです!磯部さんのキャストコメント早く聴きたい!聴きたい!

以上で、舞台「やがて君になる」の感想を終わります。





②原作「やがて君になる」完結までの過ごし方

ここからは非常に個人的な話になりますので、ご興味ある方のみ読んでもらえれば幸いです。

結論から言うと、「原作が完結まで仕事をめちゃくちゃ頑張ります」というものです。
それだけです。

話は飛んで、やが君と出会ったのが2018年の10月。TVアニメから。
それまで全く縁のなかった考察記事なんてものを書いてみたり。

自分が気づいて発信した何かが、誰かの刺激になった。今までにない感覚でした。
記事を書き終えたあとは毎回、脳の稼働領域を全部使って吐き出したような、味わったことのない何とも言えない疲労感・心地よさがありました。

アニメ放送期間中の3か月は、本当に濃密なものでした。

アニメが終わってからは、本誌を追いかける日々。これもめちゃくちゃ楽しい。
特にTwitterで、本誌の扉絵のラフ(予告)をみてタイムライン上であーだこーだ色々なつぶやきを見れる、皆で一喜一憂できる、共有できるのが最高に楽しくて。

特に沙弥香の物語に一つの決着がつく37話・38話は、ページをめくる手が震えるほど緊張しながら臨みました。

原作は39話・40話と進んで、特に40話の感想は「侑、良かったね・・」と言うしか語彙力がなく、もうすぐそれから1か月経とうとしていますが、未だに「侑、良かったね・・」と涙ながらに語るしかできません。

そして、本記事で述べた「舞台」・スピンオフ小説「佐伯沙弥香について(2)」にも触れることができました。

その中で思うことがひとつ。

「何だかもらってばかりだなあ・・・」

と。

何かアウトプットをしたい。こんなに与えてもらってるのだから、誰かに・何かに還元したい。

そんな少しモヤついた気持ちに決着がついたのが、舞台鑑賞でした。
舞台のまとめでも述べたように、役者の皆さん・スタッフの皆さんは全力で生きている。仲谷先生を始めとした原作の皆さんも(表には見えないし絶対に出さないのだろうけど)命がけで作品を生み出し続けている。

じゃあ自分もそれに倣ってがむしゃらに何かに夢中になりたい、考察記事を書いていた時のような達成感を味わいたいと思ったときに、「仕事を全力で頑張る」という答えに行きつきました。

なぜなら、人生において、仕事に触れている時間の割合が最も大きいからです。
家族と過ごす時間と同じかそれ以上に。今の仕事についてから丸10年経ったという節目でもあり、自分の可能性をもっと追及してもいいんじゃないと。

なので「やが君」が完結するまでは全力で仕事をして、胸を張って最終回を迎えたい。走り続ける彼女たちのゴールを、自分も走りながら見届けたい。

原作40話と、舞台を鑑賞して、そんな気持ちになりました。
改めてすごい作品に出会えたなあと心の底から思います。


本記事は以上になります。
最終回までの過ごし方の部分は本当に個人的な内容となり恐縮です。舞台の感想と並べるか迷ったのですが、個人的には表裏一体の内容のため、ひとまとめの構成とさせて頂きました。最後まで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございます。



そして間もなく、スペシャルイベント「生徒総会」がやってきますね!
ここまであっという間でしたね~
本当に楽しみです。
生のゆっきぶっきー・そして茅野さんに会える・・・こんな素晴らしいことがあっていいのだろうか?朗読劇の中身も気になる。安月名さんの生歌も聴ける!?そんな素晴らs

いやもう、ひたすらウッキウキです・・
(なにかよい発表があるかもしれないしないかもしれないですが、今は出演者の皆さんに会えることと、やが君ガチ勢と同じ空間に行けるということが楽しみでそれで充分なテンションでおります。参加される方々、どうぞよろしくお願いします。)


では最後に・・・

磯部花凛さん、好きです!!!!!!!

やがて君になる トークイベント「終着駅のその先へ」レポート【2019.2.26】

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【イベント名】TVアニメ『やがて君になる
     トークイベント『終着駅のその先へ』
 

【開催場所】新宿ロフトプラスワン

【開催日時】2019年2月26日  19:30~22:30


★前語り
2018年10月~12月まで放送されていた、TVアニメ『やがて君になる』の製作者6名によるトークショーイベントが、新宿ロフトプラスワンにて開催されました。あまりに濃密な3時間でした。今回はその一部始終をレポート形式にてまとめさせていただきます。本レポートを読んで頂きたい方は以下の通りです。

①今回、来たくても来れなかった方
②今回された方のための備忘録として
③やが君アニメまたは原作に触れたことがあり、興味がある方

今回のトーク内容は、本当に密度・純度の高い情報が散りばめられていたため、「創作物を制作する」という行為を行っている人にとっても、今回の記事の内容は参考になると断言できるものになっています。

当日の臨場感や会場の雰囲気が、少しでも早く伝わればと思うので、今回の記事の内容は、時系列順にズラッと書き連ねています。

■■■大事な注意書きなのですが、本レポートの内容はメモを基に記載したものなので、ニュアンスなど、実際の発言と異なる部分があります。ご了承ください。■■■






それではレポートスタート!!




【座席表】

登壇者は全部で6名。ぎっしり埋め尽くされた客席(ファンの数は160人!)の中央に大型スクリーンが配置され、その下に登壇者の席があります。スクリーンにはそれぞれのパソコンの映像が同期して見られるように設定されています。

客席から向かって右側から順番に、登壇者をご紹介します。

1.山下愼平さん(プロデューサー)(以下「P」):司会進行役、イケメン
2.楠達矢さん(原作担当編集)(以下「」):作画オタク、先生の女房役
3.仲谷鳰さん(原作)(以下「先生」):鳰マスク取った!美人!!!!
4.加藤誠さん(監督)(以下「監督」):いつも明るく元気な監督。今回は呑まれた。
5.合田浩章さん(作画監督)(以下「」):監督を呑みこんだレジェンド作画監督
6.長野敏之さん(アニメーションプロデューサー)(以下「」):製作会社「トロイカ」の社長様。

※略称は登壇者が喋った場面で「」の前に付ける形で使用いたします。


登壇者入場の前に、楠さん&合田さんがクイズを出して会場を温めてくれている。まだ開始前なのに客席からは沢山の笑い声が。皆さんノリがよい。

そして登壇者入場。先生がいつもの「鳰マスク」を付けたまま!もうこれだけで面白い。着席すると割とすぐに鳰マスクを外す先生。いやあ、都さんばりの美人でした。

登壇者から一人ずつご挨拶。


ク「みなさんツイッターはやってますよね!?分かりますよね!?いきますよ!!明日は何になる!?!?!?」
客席「やがて君になる!!!!!!!!!」


はい、この一体感、最の高。

そして監督の乾杯によりトークイベントの第一部がスタート。あ、先生たちの前にいる人たち先生たちと杯を交わしている。いいな・・・。★★先生1杯目、ドラフトギネス★★


①原作での制作秘話

◆仲谷先生の生プロット、やが君誕生の爆心地
・先生が原作第4巻22話「気がつけば息もできない」のプロットを持ってきてくれる
→テキストファイルで横書きでシナリオが描かれている。完全に文書のみのデータ。
→これは連載当時に作成したもの
→プロットの段階では、楠さんの指摘により、ばっさり切られることが多い。たとえば
22話において、プロットでは合宿の練習中に劇の内容を変えることが決まる流れになっていたが、22話終盤侑が劇内容の改変を決断したというインパクトを強めるために、練習中の劇改変はカットされた、など。
→プロット時の先生は自信がない文章なことが多い。「ここでの侑は●●みたいな気持ち(?)」のように(?)が多用されている。

・プロットの次は脚本
→脚本もプロットと同じように横書きで文書ファイルに書き連ねられている。


≪ここで裏話≫

「22話でアニメ化が決まったんですけど、先生、その時のシナリオで「わたしの●●なもの嫌いって言わないでよ」というシーンを入れているんですよwすごくないですか?なんて挑戦的なんだろうとw」
※合宿から帰って侑の部屋で過ごしたあとの、駅の別れ際で侑が放った言葉ですね、●●の部分を「ばか」で覆い被せる、漫画ならではの手法を用いたという。「さ、これ、アニメでどう表現するの?」とでも言わんばかりの仲谷先生の姿勢が「挑戦的」ということですねw


「直しがないとは言いましたが、最近やばいんですよ。37・38・39話が本当にやばいんです。特に37話は脚本と完成したネームが全然違うものになってますからね」
先生「楠さんはコマの位置・フキダシの位置にとにかく厳しいんですよ。ネームの段階で何となく配置したら絶対突っ込まれる」
「全てのコマ・フキダシには理由があるからそれを説明できなきゃダメ!」
先生構成/プロット/脚本/ネーム/作画の順で書いていってその度に楠さんと打ち合わせするんですが、作画が終わってもまた修正させれることもあって。いや何回戦うんだと(笑)」


(一同笑)

※先生が解説してくださっている間、楠さんが突っ込んだ場面があって、それに対して先生が強気に言い返している場面もありました。

「今ので、どんな風に打ち合わせているか分かったでしょ?w」

 



◆なぜ電撃大王で連載を?
先生コミティアというイベントに先生が参加していたら、楠さんから声をかけられた。で、やってみるかと。」
「今もあとがきでもあっさり受けたみたいな言い方してますが、僕1年間口説いてますからねw」
「同人時代からプロ意識はあったのか?」
先生「あった。どうせ自分はプロになるだろうと思っていた。保育園のころから思っていた。」
先生「今はアシスタントはいない。以前(4巻頃)手伝ってくれていた方も連載を始めたので今はいない。アニメの作画レベルが高すぎたことで、漫画の方も作画のハードルが上がってきてヤバい。」

※あの最近の超作画を、先生一人でやっている、だど・・?凄すぎませんか・・??


②アニメでの制作秘話

◆なぜ「やがて君になる」を選んだのか?
監督「いくつかアニメの候補はあったのですが、やが君は百合ものと聞いて、女の子同士がただイチャイチャしているだけならやらなかったけど、やが君はそうじゃなかったのでやりたいと思いました。」
ク「こちらも第一希望はトロイカさんでした。」

★先生2杯目、日本酒ライム★★

◆監督のこだわり、制作時の苦労話
・語り過ぎず、自分の色を出すことを意識することはなかった。意識しなくても勝手に出てくるだろうと。前に監督を務めた作品の時はどうやって終わらせるかで手一杯だった。やがては現場で働いているみんなをどうやっていい方向に持っていくか考えていた。
・メッセージカードが嬉しかった
→年末はとある別作品と同時進行で仕事をしていた。
→人間48h仕事できるんだなとw
 いい年したおじさんズが、深夜からチェック作業を。真剣に9話の倉庫のシーンを眺める。おじさんズ「ちゃんとキスしてる?」
→そんな中、アフレコの最後にキャストの皆さんから手書きのメッセージカードを貰えた。涙腺が緩んだ。

≪ここで裏話≫
◆9話はヘッドホンで聞いて!
ツイッターで9話をヘッドホンで聞くといいですよと教えてもらって聞いてみたら椅子から転げ落ちたwあれほんとすごいですよ」

(一同笑)



◆寿さんの「フゥー!」@9話
・9話アフレコ時。通常、演技が終わってからすぐにマイクのスイッチを切るため、寿さんの「フゥー!」もスタッフには聞こえない。だけど9話はあまりに恥ずかしかったのか、寿さんの「フゥー!」が速すぎて聞こえてきちゃったそう。


◆キャストの決め手
・燈子役:寿さんはすんなり決まった。一番早くに決まった。一度PV作成時にお願いしている経緯があったが、その上でフラットな人選を試みたが、それでもやっぱり寿さんで、となった。
・侑役:高田さんは、決まるまで大変だった。オーディションを重ねて絞って、8名ぐらいを実際にスタジオで呼んでのオーディション。高田さんの順番は最後だった。で、最後の高田さんの演技を聞いて「あ、これもう高田さんだ」ということで決定。
・沙弥香役:茅野さんは第一候補だったが、スケジュール調整が大変だった。そのクールの茅野さんの出演数すごかった。会話している2人を別々の時間でとる「別撮り」という手法もあるが、このアニメはそれは絶対したくなかった。

≪ここで裏話≫
先生&「BD3巻のオーディオコメンタリーが茅野さんなんですが、茅野さんが沙弥香をめちゃくちゃ語っていて。これコメンタリーが茅野さんだから分からなくなってますが、ただの沙弥香オタクなんですよね(笑)佐伯沙弥香について語る沙弥香役の茅野さん(笑)」

(一同大爆笑)



◆キャラクターデザインについて
P「合田さんがキャラデザをするとき、先生の絵を見てどう思いましたか?」
「どうやったら再現できるか悩んだ。エロ峠書かなきゃ・・!人間ドラマのために、綺麗・清潔感が出るよう心掛けた。胸の描写も露骨にせず、グラデーションで陰影をつけるだけで抑え目に。」
先生「レジェンドにやっていただけるなんて。でも何だかんだ修正はかけました。」
「レジェンドなのに「仲谷先生、書き方を教えてください」と言えるのが凄い。」


ここで色彩設計に関する秘蔵資料登場(絶対に社外秘なもの)。
次々にキャラクターがスクリーンに映し出される。

「こよかわ~」
「槙くんキューティクルかかっているんだ」
先生「男子生徒の校章ってデザインあるんですかと聞かれるんですが、すいません考えてませんでした。」
先生「侑のクラゲTシャツ!これ販売されるから買ってね!」
先生「あ、ポテトきた」

「この目の瞳孔の描写の部分がすごく悩んでいて・・。終わった今でもこれでよかったかと悩んでいるのですが・・。先生、気づかれました?途中で変わっているの?」
先生「ん?」 ←ご飯食べるのに夢中で質問聞いてない先生


(一同大爆笑)



◆加藤監督によるOP徹底解説!! 
・冒頭のはなびら ピンクは侑(明るい、元気)・青は燈子(静かな愛)
→燈子が握るシーンは最初はなかった。
→この場面は、OPラストで最後に二人が手を握っている場面と同じ。それを別アングル(冒頭が近距離、ラストが引いた視点)で捉えたもの。
→ゆえに、冒頭とラストが繋がっている演出になっている

・それぞれの足元を表しているもの
燈子→砂=無
沙弥香→お花畑 ※多く配置することで、無である燈子とキョリ感をだして対比させている
こよみ→落ち葉 ※こよみは読書が好きなので、秋から連想
朱里→雪 ※失恋の意味。それだけではなくて、雪はいつか溶けるので希望の意味もある。アネモネ花言葉は儚い恋。

先生「監督から細かく聞けて良かったです」
「ああっ!ここのアネモネアネモネの作画がいい!!」
先生「しずかに作画オタク!!!!」

夫婦漫才過ぎて草(⌒,_ゝ⌒) 


・沙弥香とコーヒー/手を伸ばす沙弥香
→沙弥香にとってコーヒーは「自分の気持ちを内に飲む」もの。
→教室から出る燈子を見る沙弥香の視線、その間にある花で「輪っか」ができている
→手を伸ばす沙弥香は13話での伏線。13話で手を伸ばす沙弥香が一瞬ぴくついたのは、
 このOPでの失敗があるから。それを恐れて沙弥香は13話でもすぐに手を伸ばせない。
→(13話喫茶店でのシーン)燈子の肩までは触れられない沙弥香。だけど、そばにいることはできるので、手を握ることはできる。一方で侑は燈子の肩を引き寄せる。2人の対比。


・サビ部分:なぜサビで盛り上がる場面にもかかわらず花は枯れたのか?
→その後のシーンで、再び花が咲くカットがある。二人の愛は消えないことを示したかった。そのために一度花を枯らす必要があった。

・侑と燈子が持つ鏡の意味
→2人が持っているのは鏡。照れ隠しで顔を隠すが、結局相手の顔が写ってしまっている。

・ラスト:手を握り合い眠る2人
→ここでは永遠を示したかった。死=負(マイナス)という意味だけじゃない。無にはならない。2人の愛を永遠にしたい。それを蔦(つた)でより強固にした。人間の二面性を示したかった、それには仮面(ペルソナ)だと。ドクロは流石にやばいと思った。



ーーーーーーーーーーーーー(第一部終了)-------------



ーーーーーーーーーーーーー(第二部開始)-------------

もう一度乾杯!!先生たちと乾杯できる前の人たちいいなあ・・・。
ここからはアンケート用紙に書かれた質問を答えていく形式に。


■質問「アフレコ時に印象に残ったことを教えてください」
・おなか鳴っちゃった事件(寺○さんによる)
・おなかは結構みんな鳴る。声優さんの演技する時間が10時~15時だから、お昼すぎちゃうから結構みんな鳴る。

・推しキャラの話。先生は推しはいるのか?
先生「どうしても作品のキャラは自分が投影されやすいが、私は特定の誰かに似ないようにしている。あ、でも、スピンオフ読んだ方はご存じだと思いますが柚子木千枝ってキャラがいるのですが、そのスピンオフでの千枝が自分に似てるかもなと。ちょっと私への好感度下がっちゃうかもですが」

(一同笑)

「仲谷さんへの好感度すごく下がった」


■質問「制作進行をしている者です。スケジュール大変な時はどんな時でしたか?」

「制作進行?!産業スパイでは?(笑)」
「最低どれだけあれば足りるか逆算。12時間あれば見違える動画になる。」
「話数同時並行があり大変だった。2話は大変過ぎて踏切のチューだけチェックした。7話の作画が良かったのは委託先が良かったため。9話は最初と最後の倉庫チューだけ見た。挿入歌のriseがよかった~。よすぎて俺やった倉庫の場面なくてよくない?エロ峠なくても・・。」
P「エロ峠はないとダメです(笑)」
「riseよかった~。先生はどうでした?」
先生「ん?」
先生「最初はBGMで使われるとのお話でしたが、がっつり挿入歌として使われてよかったです。歌詞もマッチしていました。」※ここでriseが流れる会場。いい雰囲気。
合「12・13話は監督も同時並行の仕事があり本当に大変だった」


■質問「OP/EDのカップリング曲の採用は決まっていたことなのでしょうか?」
→音響監督への相談の上採用決定
→そもそも13話はOP/EDがないw

・特殊EDが多かった。
→6話のEDがすごかった。歌詞と映像がリンクしていた。
監督「いや、ほんとは尺が・・」
(総ツッコミで)「「「いやそこは嘘でも計算と言ってください!!」」」
「本当はギブアップじゃなかったっけ?(笑)」
※注)映像編集さんが途中まで絵と歌詞を合わせていたけど、途中からギブアップして合わせることをしていない、という話です。



■質問「アニメ8話での紫陽花採用の経緯を教えてください」
→これは脚本:花田さんからの提案による。
監督「言葉のバトンタッチがやりたかった。白い花は沙弥香(=寛容)。盛り上がりはないけど、アイテムや言葉を散りばめることで退屈しないようにした。ほかにも話数入れ替えを行った(交点→降り込める)。」
「この辺りは4巻のコメンタリーを見てください。それから、4巻の映像は(放送時より)かなり直っています。ぜひ4巻を見てみてください。」

(一同おお~)

「これは4巻を2つ買ってもいいのでは・・!?(チラッチラッ)」



■質問「アニメ3話侑の口パクの言葉を教えてください」
監督「これは僕のアドリブで原作にないシーン。わ・た・し・は と言っています。
   燈子にとってわたしはなんなのだろう、という自問です。」


■質問「アニメ10話昼の星で短冊を飾る前の侑が暗転した場面の理由を教えてください」
監督「自分の気持ちにシャッターを下ろしたためです」

★★仲谷先生3杯目、日本酒ライム★★

■質問「沙弥香は新書評論系が好きでフィクションはそれほどとのことですが、創作も興味はないのでしょうか?」
先生「スピンオフでも描かれていますが、沙弥香は向上心が強い子なので、このような設定となっています。自分の役に立つ本が好きだと。」


■質問「最終回を水族館にすることに迷いはなかったのでしょうか?」
監督「ありません!劇までやると、逆に切れなくなっちゃう。水族館で終わるのが一番綺麗。」
「原作サイドもそのつもりでした。」



質問「どのシーンが描いていて楽しかったですか?」
「先生あるかな?忘れるもんね」
先生「エロ峠のようなシーンを書くのは楽しいですね。ああいうシーンはクスノキさんからの修正があまり入らないというのもあって、好きに描いて楽しいです」
「エロシーンは得意でないので・・」

監督「楽しいというのはない。絞り出す、にじり出すようにしているので。楽しんでたら、逆にたいしたシーンが生まれないんじゃないかと。どこまで自分を追い込めるか?本物に近づけるか?」
先生「本物に近づけるというのは分かります」
監督「そういうスタイルなので。生きてるなと感じます」

「11話、お風呂、すごい・・(エコー)
    どうせこれ湯気で隠れるでしょう?どうせ隠れるなら書いてもいいでしょ?」

(一同大爆笑)

≪ここで裏話≫
「合田さん、めちゃくちゃ槙くん好きなんですよ。BDのパッケージ・hectopascalのジャケット絵・12話のベッドシーンにも槙くんを入れたのを書いて提出してくるんですよ(笑)」

スクリーンに映し出されるジャケット絵・エロ峠の場面、そのどれもに槙くんが写っている。会場大笑い。

「毎回マジメな顔して提出してきて(笑)最初の方は突っ込んでましたが、最後の方は誰も突っ込まなくなりました(笑)」


ここまでで質問タイム終了!
最後にくじ引きタイム。当たったらなんと、「仲谷先生・加藤監督2名のサイン入り台本」が!!全13話分あり、13名に当たるという超貴重なお品!!



【登壇者退場】

そして、あっという間に3時間が過ぎて、いよいよ登壇者より締めのご挨拶。

「アニメを作っていられるのもみなさんがいてくれるから。こういう機会は中々ないんですよ。」

「本当に恵まれた作品であり、原作だと思います。そしてみんな覚悟はできているか・・?今夜24時・・!!!日付変わってから言えることもあるので。」

「終着点のその先の話が全然できなかった。鳰先生に聞きたい10の質問も用意してきたのに・・。次があることを信じています。」

先生「今日、中々ディープで濃いなお話ができました。濃いファンが来てくれたおかげです。一緒に楽しめました。もっと楽しみたいので、BDのほう宜しくお願いします。原作者としてこんなに幸せなアニメはないです。楽しかったです。これからもよろしくお願いします。」

監督「今日は合田さん楠さん達に呑まれてしまいました。放映中はネットのエゴサはしていないのですが、13話が終わって初めてファンの言葉を見ました。細かく考察してくれる人がいたのが嬉しかったです。あおきえいという大きな山がありますが、この作品を持って、監督:加藤誠を認知してくれたかなと。見てくれた人の一部になれてよかった。生きててよかった。僕は裏方でいい。1人でも喜んでもらえたらいい、生きていける。アニメを完結したい気持ちです。」

P「アニメを作る推進力としては、BD/DVDの売り上げが一番。いくら海外配信があっても、保証にはならない。グッズの売り上げもあるが、やはり、一番はBD/DVDの数字、これがダイレクトに響く。」
「あんまり買ってくださいばかり言うと不安がる人もいると思うので、1つ言っておくとやが君は売れています。」
P「そうです。百合作品としては、やが君より売れた作品は10年以上さかのぼらないと見つからない。まだどうなるかは分かりませんが、ここにいる160人の精鋭のみなさま、そして後ろに控えている16000人のみなさま、宜しくお願いします。」


監督より最後のあいさつ
「絵コンテ持ってきましたが、皆さんに順番に回せればと思いましたが、渡すタイミング逃しちゃいました。また機会があれば・・。今日はありがとうございました。」





そして、登壇者の皆さんが拍手の中退場されました。

これにて、トークイベントは終了となりました。本当に濃密な3時間でした。




★後語り

本当に、今日、あの場所に行くことができてよかったです。自分は前日までチケットがなく、ご厚意により奇跡の参加を果たすことができました。今日のイベントで聞けたことは、自分にとって無二の財産になりました。このレポートにより、参加できなかった方に、少しでも製作者の方々の熱量が伝わればうれしいです。

実際のトーク内容と相違や不足がありましたら、ご指摘いただけると幸いです。


個人的には、加藤監督のお話が印象的でした。沙弥香のコーヒーや、肩に触れられない沙弥香と侑の対比がピンポイントで考察できていたことが自信になりました。加藤監督の創作物に対する姿勢を心の底から尊敬します。もっともっと加藤監督からお話を聞きたかったです。3時間でも短すぎました。

今度もしイベントがあるなら、配信だけでもすごい人が来ると思いますし、有料配信でも皆さんくると思うので、ぜひとも公式様企画立案のほど、お願いします!!!

最後に、ツイッターでお話しさせてもらっている方々ともお会いできて嬉しかったです(その嬉しいって、)。今39話が配信されてから4時間が経過していますが、みんな息しているかな・・・?


次は5月の生徒総会ですかね!!
2019年もやが君を楽しめていることに心から感謝です。

トークイベントお疲れ様でした!!!!

やがて君になる 13話(最終回) 感想 考察 ~灯台に導かれて/あなたは何者にもなれる~

 

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(先輩 そろそろ 乗り換えですよ ------小糸侑)


こんにちわ。づかと申します。

ついに最終回となる、13話の放送が終わりました。アニメ『やがて君になる』。
放送直後、終わってしまった悲しみと、それ以上に、この作品に出会えた・見届けることができたという何とも言えない幸福感に包まれて胸がいっぱいになりました。

放送から数日経ち、寂しさが募りつつありますが、今回も考察・感想を述べてまいります。13話は多くの素晴らしい演出がありました。未だ思考の整理が追い付いていない状況でして、いつも以上に散らかった内容になっておりますが、ご容赦頂ければと思います。

※本記事はアニメ『やがて君になる』13話(最終回)までのネタバレを含みます。ご一読の際は、13話まで視聴の上でご覧ください。なお、筆者は原作既読勢ですが、本記事に原作のネタバレはありません。


やがて君になる』13話(最終回)「終着駅まで/灯台

【目次】
1.燈子の憂い/「終着駅」の意味


2.燈子にとっての「光」/「海」とは

3.サブタイトル考察「終着駅まで/灯台

4.水族館・魚などの考察

5.沙弥香の描写

6.ブログ紹介

7.感想など




1.燈子の憂い/終着駅の意味


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(列車通過の際、半歩踏み出す燈子。ひやっとする場面)

大項目の1.2.では、いずれも燈子に注目して考察していきます。

●雲・セミの描写

まずは冒頭の描写から。燈子は、お姉さんのお墓参りをしています。姉の墓石に向かって、「もうすぐ夏休みが終わって 劇の練習を重ねて お姉ちゃんの命日が過ぎて 文化祭の日がくる」「私ちゃんとやるからね」と呟きます。

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そして、入道雲が映し出されます。
10話時点では、燈子の目の前にある入道雲はとても伸びやかでした。また、雲の頂点より上にも「余白」があり、伸び代がまだあることが分かります。

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(10話/晴れた空に入道雲が伸びている)

10話段階での考察で、筆者は工事現場を侑に例え、またそれが柵によって蓋をされている見方を示しました。13話では、それと同じように、燈子の入道雲も墓石によって閉じ込められている印象を受けます。

また、13話では他にも、

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等のように入道雲の描写がありますが、いずれも画面一杯まで雲がかかっていたり、傾いたり、見切れていたりと、10話の雲と比較すると「成長が止まっている」「歪みはじめている」ような描写になっています。合宿での市ヶ谷さんの発言や、劇が終わった後のことを考えて、燈子の心境に大きく影を落としていることが伺えます。

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続いてセミの描写について。
2枚のセミの羽が流れています。羽は右翼・左翼1枚ずつなので、同じセミの羽と見ることができます。1枚の羽は動かず、1枚の羽は回転しています。季節の終わりを示していることが直接的な表現としてありますが、それ以外に色々な解釈が出来る場面だと思います。

①同一のセミ=同一人物と捉える
セミの羽はいずれも燈子のものであり、変わろうとしない羽・変化しようともがいている羽を示すもの
セミを同一人物と捉えない
燈子と澪と見る。動かない羽は亡くなった、もう何者にもなれない澪を示し、動いている羽は澪の年齢を追い抜かし、色々な可能性を秘めている燈子を示している。
セミを同一人物と捉えない
沙弥香と侑と見る。動かない羽は現状維持を貫く沙弥香、動く羽は変化を促す侑を示している(この部分は後述します)。

筆者は第1感では②案を思い浮かべました。


●「終着駅」の意味

茶店Echoで沙弥香と話をした後でも、燈子の憂いを帯びた表情をしています。
駅で電車を待ちながらよぎる思いは「だけど劇が終わったら?そうしたら私はどこに行ける...?」でした。劇の終わった後、その先のゴール(=終着駅)までが全くイメージできない状況にあります。

なお、終着駅の意味は下記のとおりです。

終着駅 - Wikipedia

(以下引用)
線路名称で、ある路線の終点となっている駅を終着駅という。たとえば東京駅から神戸駅に至る東海道本線の終着駅は神戸駅である。なお、線路名称上始点でも終点から見れば終着駅になりうる。つまり、東海道本線の終着駅は東京駅でもよい。 (引用終わり)


ここで抑えたいポイントが、引用文にもある通り「終着駅」が「始発駅」にもなりえる
ということです。この点は3項でもう少し詳しく述べます。



2.燈子にとっての「光」/「海」


筆者は、特に第12話において、侑にとっての「光」/「宇宙」/「海」について言及してきました。

では、燈子にとってそれらはどういったものなのか?それが第13話では明らかになったので、述べていきます。

●「光」について

これは、侑と同じく「夢」「願い」と捉えています。燈子の願いは「生徒会劇を成功させる=姉になる」です。しかしこの願いは、第11話より大きくグラついてしまいました。

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13話冒頭、燈子は光に対して眩しそうな様子を見せています。これは、自分の願いに対して反射してきた光が、自分の思っていたものと異なってきたことが原因です。


●「海」について

七海燈子にとって「海」とは「小糸侑」です。即興劇が終わった後、侑はペンギン散歩のイベントを見るために走り出します。それを見る燈子の視界には、海の中を歩く侑の姿が映し出されます。

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(海の中を歩く侑)

これまで、1話・9話などで、侑が海の中に潜る場面は多々ありました。しかしここでは、「あくまで燈子の視点で描かれた侑」となっています。なぜ燈子にとって侑は海なのか?根拠は次の要素です。

◆燈子は侑に澪を重ねている

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→12話で燈子は侑に、澪にしてもらっていたように膝枕を要求しました。6話では、「君の前でただの私に戻るのは居心地がいいけれど」とも言っていました。8話でも雨宿りの場面で甘え上手な一面を見せています。燈子は、姉にできなかった、できなくなってしまった「甘え」を侑に求めている場面があります。

そして、「七海澪」という名前。11話の記事で考察しましたが、この名前は非常に水成分が多い漢字で構成されています。「七海」という苗字に「海」が入っており、家系のルーツ的に、澪という名前にも水の要素があり、燈子にとって海は帰るべき場所・居心地の良い場所なのだと考えます。

◆侑自身、水族館が好き
SNSのアイコン・携帯のストラップ・Tシャツの柄など、侑のプロフィール的にも「海の生き物が好き」ということは明らかです。そのため、シンプルに侑=海のイメージを持つことができます。

◆「・・矛盾しててもいいんじゃないんですかべつに
→「好きと言える自分に安心する」という燈子に対し、侑が放った器の大きな一言です。姉になろうとしながら自分を捨てられない燈子を、否定も肯定もしないこの言葉は、燈子が最も好む類のものであり、侑の海のような懐の大きさが伺えます。


これらの要素から、燈子は侑に海を見出します。しかし、先を行く侑に手を伸ばしますが、その手は途中で下げてしまいます。

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「手を伸ばしたけれども届かない場面②」になります。場面①は沙弥香が行っており、こちらは本記事の最後に述べます。

ここで燈子の頭によぎったことは、11話でも言っていた「その優しさを使い尽くしてしまうのが怖い」でしょうか。特別を持ってしまうと、それを失うことに怯えるのは誰もがそうであり、燈子は既にそれを経験しています。だから、手を引っ込めてしまった。

そしてそんな悩みはお構いなしとばかりに笑顔を浮かべて「七海先輩!」と声をかける侑。13話は、全編が尊いシーンになっていますが、ここの侑の笑顔は燈子のすべてを受け入れてくれるような本当に素敵な表情をしています。

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(七海先輩!)


これらを踏まえて、次項にてサブタイトルの意味の解釈及び13話の核心部分に触れていきたいと思います。



3.サブタイトル考察「終着駅まで/灯台

水族館デートも、もう間もなく終わりという頃、燈子は侑を見失います。そしてすぐに侑が燈子の手を引き、2人は出口へと向かいます。ここからの一連のシーンは、1話から始まったアニメ『やがて君になる』という作品のクライマックスとなる、感動的なシーンが続きました。きっと、作品を観ていた誰もが「このまま 終わらなければいいのに」と2人の気持ちと共にあったことと思います。


●終着駅=始発駅

1項で述べた終着駅に関する補足です。上記の引用文にある通り、終着駅がゴールではなく、そこが始発駅となるという事例ですね。たとえば、折り返し運転になったり、そこから別の路線の行先になったりと。

13話クライマックスシーンにおいても同様の場面がありました。


◆瞳の中の侑

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ここは1話の、1番最初の場面と同じ演出です。1話は侑の瞳に2人の手があり、宇宙が映し出されていました。

◆燈子の手を引く侑

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この構図は、1話ラストで燈子が侑を抱き寄せた場面と同じです。あの日から、侑と燈子の物語は動き始めました。以来、燈子は侑のことを振り回し、影響を与え続けます。

13話では、侑は「こっち」と燈子を案内します。これまでの2人と逆転した構図になっています。13話という物語の終着点において、1話と同じ演出を用いる。終わりは、何か新しいことの始発点にもなりえるという構造は、とても希望のある演出だと思います。

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灯台に導かれて

侑が案内した直後、燈子は、冒頭と同じように光に眩しさを覚えます。

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ここでも燈子は、眩しい光に対して、自分の願いを見失っている・どうしたらよいか分からない、という様子です。でも、ここで、

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マンタが光を覆うように遮ります。
少し前に、2人は買い物をしていました。そこで侑が引き当てたストラップはマンタです。侑は「そうですか?」と言いましたが、燈子はマンタを当てた侑に「侑らしい」と言っています。そのため、侑=マンタと解釈できます。マンタは優しく、光から燈子を守り、包み込むように泳いでいます。悠然と空を飛ぶように泳ぐマンタに、燈子は目を奪われます。


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マンタと侑は、燈子を導くように連れて行きます。真上にあった光ではなく、別の光に向かって歩いているようにも見えます。まるで自分の光(願い)に、進む先が分からなくなっていた燈子に対する、灯台のように。そして2人は、光に向かって手を伸ばします。「侑と一緒なら大丈夫」と言うように、燈子の眩しさを感じる描写はなく、真っ直ぐに手を伸ばしています。

マンタが飛ぶように泳いでいる姿が印象的で、空と海の境界が混ざり合うかのような、本当に幻想的なクライマックスの場面でした。

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●乗り換えと即興劇。あなたは何者にもなれる。

水族館をあとにして、侑と燈子は帰りの電車に乗りました。電車内でうとうとする燈子。侑は「このままでも悪くない」と思いながらも、乗り換えのために燈子を起こします。

・燈子の思い込み
燈子は、劇の結末も、姉になるということも、ずっと答えが1つしかないものと思い込んでいます。

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燈子が電車を待っていた場面。このあと侑から「遊びに行きませんか?」と誘われる。「終点まで先着する」ということは、この電車に待ち合わせ・乗り換えがない=選択肢は1本しかないことの暗示。

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燈子の背に、線路のように1本の窓枠が伸びている。これも選択肢が1つしかないという燈子の暗示。

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即興劇での燈子「そうなったら誰を選べば・・。」「私は誰かを選ばなければならない。だって私には記憶がないのだから。私には何もないのだから。


そんな燈子の思い込みに対し、侑は即興劇の中でこう返します。
選ぶ必要が、あるんでしょうか?」と。また、その後に心の中で力強く「でも・・!」とも呟いています。この後に続く言葉は、「変えてやる、変えてみせる。」でしょうか。侑が12話で、「劇の結末を変える」・「燈子を変えたい」と決意したからこその「でも」という言葉です。


・乗り換えの提示

電車内で、「乗り換えですよ」と告げる侑。「このままでも悪くない」と思いながらも燈子を起こしているので、この電車に乗ったままでも燈子は目的地に着いていたかもしれません。でも、侑は愛しい時間を断ち切って燈子を起こします。「あなたは変われる」と信じるように。乗り換え先の提示は「道は1つだけではない。答えは1つではない」ことを表していたと言えます。

この時の侑の手が、一度引っ込めて、もう一度自分の拳をギュッと握り、再度燈子へ手を伸ばす所作、そして優しく声をかける侑の表情。アニメの映像も、本当に最後の最後の1シーンです。ここはもう、言葉にならなくて、2人がただただ美して、素敵でした。

燈子は何者にもなれる、という可能性を感じさせる、希望に溢れたラストシーンでした。物語の節目として、これ以上ない区切りだったと改めて思います。

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4.水族館・お魚などの考察

閑話休題の内容です。

モデルとなった水族館は【マクセルアクアパーク品川】です。
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www.ariescom.jp


マンタは、日本ではこの水族館以外に、沖縄県にある【美ら海水族館】でしか展示されていないそうです。※マンタはよくエイとも言われますが、ここでいうマンタとは「ナンヨウマンタ」の種類のことです。リンク先のHPにもありますが「ナンヨウマンタ」を飼育しているのは、日本で【マクセルアクアパーク品川】と【美ら海水族館】の2つのみです。美ら海水族館の大水槽ではジンベエザメがいますが、今回の水槽にはいなかったため、侑と燈子が飲み物を飲んでいる場面はオリジナルの舞台の可能性が高いです。




リュウキュウスズメダイ
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www.aquahermit.com


リュウキュウスズメダイは、黒い線が3本あるミスジリュウキュウスズメダイと、黒い線が4本あるヨスジリュウキュウスズメダイがいるそうです。7本あるものは現実にはいない可能性がありますが、「七海」の「七」から採用したのかもしれません。リュウキュウとあるように、こちらも沖縄を連想させますね。

こちらは何となく画像検索で見つけただけなので、違う魚を紹介していたらご指摘いただければと思います。



カサゴ

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オニカサゴの特徴 | 釣魚図鑑(特徴・仕掛け・さばき方) | Honda釣り倶楽部 | Honda


種別としては「オニカサゴ」に該当するのでしょうか。その場合、オニカサゴは強い毒を持っています。一方で上手に捌ければ非常に美味な高級魚らしいです。攻略難易度が大変難しい燈子とも似ているのかもしれません・・。



5.沙弥香の描写

最後に、沙弥香に関する描写について、いくつか解釈を行い本考察を終えたいと思います。

●コップの持ち方による燈子との対比

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(沙弥香のコップの持ち方)

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(燈子のコップの持ち方)

沙弥香の飲み物の持ち方は一貫して、両手で覆うようなスタイルです。筆者は7話での考察時において、それを「自身の心・気持ちを守るため」と解釈しました。今回もそれは変わりません。一方で燈子の持ち方は非常に対照的です。必要最低限の指しか添えず、開放的とも言えないなんとも危なっかしい持ち方です。飲み物を自身の心と見た場合、「自分の心はどうでもよい」と言えそうな持ち方を燈子はしています。

この後都さんから注文していた飲み物が提供されますが、沙弥香は水とコーヒーをすぐに入れ替えていましたが、燈子は水を抱えたままです。どうでもいいはずの心なのに、それをすぐに手放すことができない。水族館での侑と会話した場面の「矛盾した燈子の心」がこの動きでも伺えます。


●沙弥香とコーヒー

これも7話で詳しく考察した内容ですが、沙弥香がコーヒーを飲む描写は、自身の気持ちを受け入れる時に限定されます。自分の心と言葉が一致していないとダメなんですね。今回、沙弥香はアイスコーヒーを注文しましたが、それを飲み込み描写はありませんでした。また、13話EDにおいても沙弥香のそばには飲み物がありましたが、飲んでいる描写はありませんでした。ちなみに、7話同様、箱崎先生はしっかりとコーヒーを飲んでいる描写がありました。


●燈子に対する手のふれ方(侑との対比)

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(「燈子にとってお姉さんがどんな人だったか教えて」と寄り添う沙弥香)

沙弥香は、燈子に触れる際に、一度肩に触れようとしますが、その手を一度下げ、改めて燈子の手に寄り添うように手を伸ばします。この局面においては、肩に触れるより手と手で触れ合う方がより、力になりたいという意思表示を沙弥香はしたかったのだと捉えています。

手を改めて伸ばす描写は、侑の電車内での動きとリンクしています。また、侑は肩に触れて、沙弥香が肩に触れなかったことは対比されています。

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(燈子の肩に手を伸ばす侑)

侑は片手でなく両手で、燈子の態勢を変えるように肩を抱いています。「正面からあなたと向き合う」ということを示しています。12話で決意した侑の強さが感じられるシーンです。

一方で沙弥香は、「あなたの気持ちに寄り添う」という選択をしています。あの場面、あの位置では、燈子の肩を抱き寄せるという動きはできません。両者の位置が横並びだったあの位置関係においては、燈子の意志を尊重し、手を握り締めるという沙弥香の行動は「最適解」だったと言えます。ただ、最適であってもそれが燈子の心に何かをもたらしていないということが歯がゆいです。


●手を伸ばす沙弥香(燈子/侑との対比)

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茶店での別れ際、沙弥香は燈子に向かって手を伸ばしていることが、その瞳に映ったことで明らかになります。しかし、沙弥香はその手を伸ばすことを諦めます。本記事中盤で述べた、手を伸ばしたけど届かない場面①になります。「自分の燈子に対する選択はこれでよかったのか」と自問するような、別れ際の沙弥香の表情がとても美しく、また儚いものになっています。

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(燈子を見送る沙弥香)

この、手を伸ばしたけどそれを引っ込めるという仕草は、燈子も侑に対して行っています。侑にその描写はありません。なぜなら、侑は燈子に対して、手を伸ばし迷わず掴んでいるからです。

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沙弥香・燈子の躊躇と対比させることで、12話でプラネタリウム(星)を掴み、確固たる願いを見つけた侑の意志の強さ・行動力の差が明らかになっています。


個人的な見解ですが、侑と燈子だけでなく、「佐伯沙弥香」という女性がいてくれたことで、筆者はこの物語により夢中になれました。筆者の考察は7話より始まっているのですが、あの時の、沙弥香を本当に大切していた描写が、自身の考察における出発駅となるものでした。沙弥香のおかげで、より一層物語に彩りが生まれ、また切なさも増しているように感じます。それは最終回においても際立っていました。

以上で、本記事全体の考察も終えさせていただきます。

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6.ブログ紹介


www.anime-kousatsu.com
いつもご紹介させて頂いているゆっちーさんの記事です。
記事の冒頭の喫茶店の攻防は確かにと思いました(笑)
灯台の光を侑に見立てていることは同じですが、燈子を案内する侑の前方に暗闇があるとの解釈もされており、微細な部分での見方が異なり面白いです。視線の意味や沙弥香の燈子への接し方も大変興味深い内容ですので、ぜひご覧ください。

yagakimi.hatenablog.jp

続いてygkmさんの記事をご紹介させていただきます。まず、燈子への光の当たり方(3つの視点)・仕切りに関する部分から始まる、燈子を暗闇から連れ出す侑の解釈は素晴らしいです。また、終着駅についても、自分が踏み込めなかったところまで言及されているので、こちらも是非ご覧ください。

それにしても、ゆっちーさん・ygkmさんは毎回(3回か4回くらい?)アイキャッチ画像が被っていて仲良いなあ(都さん風)と思っています。

ブログ紹介は以上です。


7.感想など

やがて君になる13話の放送をもちまして、7話より続けておりました考察記事も終わりとなります。冒頭でも述べましたが、本当に素晴らしいアニメでした。ここまでのめり込んだ作品は自分にとって経験がありません。

まず、何といっても原作の物語が圧倒的な魅力を放っています。作品が持つ表現力・構成力・密度の高さ・論理的な物語の進み方は、今まで見たことがありません。

そしてそんな素晴らしい原作を、忠実かつアニメならではの描写をこれでもかとつぎ込んで映像化してくださったアニメスタッフの方々に心から感謝します。視聴している方が沢山言葉にされているように「原作への深い敬意・愛」を感じる描き方をでした。

作品のテーマの1つである、「好き」という気持ちについても、考えさせられました。
「好きになるってどういうこと?」と問われると言語化できない、本当に難しい言葉ですが、「やが君のキャラクターはみんな好き」ということは自信を持って言えます。

侑・燈子・沙弥香はもちろんのこと、槙くん・堂島くん・こよみ・朱里たち、大人メンバーの誰もが好きです。共通して、みんな「いい子」であり「いい人」だからだと思います。

筆者は原作を読んでいるため、アニメ13話より先の話を知っています。映像化して観たい場面が、いくつもあります。彼女たちの物語の結末を、もう一度アニメで見られることを心の底から願っています。BDは全巻予約しているので、他には、布教をしたり、とにかく「やが君」を話題にし続けることができることかなと思います。


最後に、拙い考察で恐縮ではありますが、これまで記事を読んでくださった方に感謝します。この3か月間、本当に楽しかったです。ネットを通じて、皆さんの考察を読んだり、毎週アニメ放送前・放送時・放送後に盛り上がりを共有したりと。それがなくなってしまうのが寂しくてたまりません。。。

でも、原作は続いていくので、それを支えに2019年を生きていこうと思います(笑)
ではでは!!



やがて君になる 12話 感想 考察 ~侑とプラネタリウム/願いはこの手で掴み取る~


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(それでも あの人を変えたい ------小糸侑)

 

こんにちわ。づかと申します。

屈指の神回となったやが君12話でした。視聴1回目はそのあまりの素晴らしさに言葉を失いました。これまでの積み重ねがあったからこそ、たどり着いた一つの答え。

述べたいことは沢山あるのですが、今回は特に「侑とプラネタリウムの関係性」・「小糸侑という人物について」と、テーマを2つに限定して感想&考察を述べたいと思います。

※本記事はアニメ『やがて君になる』12話までのネタバレを含みます。ご一読の際は、12話まで視聴の上でご覧ください。なお、筆者は原作既読勢ですが、本記事に原作のネタバレはありません。




やがて君になる』12話「気が付けば息もできない」




【目次】
1.侑とプラネタリウム


2.小糸「侑」について

3.ブログ紹介

4.BD/DVD1巻感想




1.侑とプラネタリウム



●OPから見る侑のキーアイテム

12話の内容に触れる前に、まず、侑のキーアイテムとなる「プラネタリウム」が持つ役割についてお話します。

OPでは、それぞれがキーアイテムを手にしています。
・沙弥香はコーヒー
・燈子は姉の写った家族の写真 といったように。


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(OPの侑。プラネタリウムを両手で抱えている)

侑はプラネタリウム(=宇宙)を手にしています。そして、足元が水に浸かっていることもポイントです。足元の水の描写は、これまでの話数でも何度も登場しているように、「海」を示しています。


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(1話/深い海に侑が取り残されている様な描写)


つまりこのOPでは、侑の世界は、「海」・「陸地」・「宇宙」の3層によって構成されていることを示しています。

筆者は、この3層構造を理解することに、非常に困難を感じていました。
・侑が海の中にいる描写は多い。でも、海と宇宙って、とても離れているけれども、どのように繋がるのだろう??
・3話サブタイトル「まだ大気圏」。大気圏ってどこ??

こんな疑問が、作品を見始めてからずっとありました。自分にとって、侑とプラネタリウム(宇宙)と海の関係性を理解することが、最難関の課題としてありました。それが今回の12話を持って、ようやく見えてきました。



プラネタリウムの持つ役割に話を戻します。プラネタリウムからは、「光」が発せられ、天井には「星」が写ります。

侑にとって、「光」は<特別>であり<眩しい>ものでした。「星」もまた、侑にとっては届くことがない<特別>なものでした。また、それ以外にも「星」には<願い><夢>という役割も込められていると解釈します。


・1話:サブタイトル「わたしは星に届かない」
・3話:特別を既に持っている怜ちゃんが星に手が届く
・3話:侑の独白「わたしもいつか届いたりするのかな」と星に手を伸ばすも、流れ星のように手は流れていく
・10話:星に願いごとを届けたいけれど、白紙の短冊を飾る

このように、これまでも星に関する描写は多くありました。

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(3話/怜ちゃんは星に手が届く。侑は届かない。)

整理しますと、
「光」=<特別><眩しい>
「星」=<特別><願い=
となります。



では、「海」が持つ役割はというと、「夢」に対する言葉なので「現実」となります。

侑はこれまで、燈子に対して自分の気持ちを抑え込む場面が沢山ありました。本当は言葉に出したいけれども、燈子と共にいるために何も言えない・・。そんな苦しい現実の様子を、海の中にいる侑という描写で表現していました。

この辺りの描写は9話考察時に詳しく行っているので、併せて読んで頂ければより分かりやすいかと思います。
やがて君になる 9話 感想 考察 ~身が千切れるような侑の心情~ - 三十路会社員のレート奮闘記



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(9話/燈子にキスする直前、踏みとどまった際の演出)


最後の「陸地」について、これも「現実」を示していると判断します。

この考えの基は3話サブタイトルであった「まだ大気圏」です。
大気圏とは、「空気の存在している場所」をさし、宇宙・海ともに、人間は空気を吸うことはできない場所です。陸地のみが空気を吸うことができる場所という点がポイントです。

あの時の侑は、<燈子に対してまだ恋心を抱いていない=海に潜る必要はなく、宇宙に昇る理由もない>ため、どちらにも属していない陸地にいる=「まだ大気圏」となっているのだと。

海・陸地ともに現実ではありますが、海は「現実(恋愛面)」陸地は「現実(恋愛以外)」と差別化することもできそうです。




<宇宙・海ともに空気を吸うことができない場所>という点は、後述しますが、12話サブタイトル解釈の為に非常に重要な要素です。

OPから見る侑のキーアイテムの考察は以上であり、次項よりこれを踏まえて12話を見ていきます。






●星に手が届いた侑

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(こよみに、「劇の結末を変えよう」と提案する侑)


前段が非常に長くなりましたが、ここから12話の内容に触れてまいります。

合宿が終わり、侑の部屋で燈子と2人で過ごしたあと、侑は決断します。
「劇の結末を変えよう」
「七海先輩に自分のこと嫌いじゃなくなってほしい」と。

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侑「誰かにならなきゃ駄目ですか?」
燈子「駄目だよ 
   私のままの私に何の意味があるの」

燈子「私は自分のこと嫌いだから 私の嫌いなもの
   を好きって言ってくる人のこと

   好きになれないでしょ?」

その理由は、燈子との一連の会話にありました。
私のままの私に何の意味があるの→意味はある、だってわたしはどちらの先輩も好きだからと伝えたい。だけど伝える術がない。それなら、先輩が変わるしかない、変わってほしい。


この願いから、侑はこよみに劇の結末を変えようと提案します。劇の主人公が過去を基準に自分の未来を選択することに疑問を感じ、劇中で過ごした時間の中から未来を選択しなければ、この劇の時間に意味がなかったみたいだ、と。この理論はそっくりそのまま燈子と生徒会で過ごした日々にも当てはまります。劇と現実が綺麗に交差し、侑は最後にこう願います。「それでも あの人を変えたい」と。


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このプラネタリウムを抱える描写・演出が神がかっています。もうすごい、ただただすごいです。


OPの項で述べましたが、プラネタリウムが発する「光」・「星」は<特別><眩しい><願い>です。でも、ここでの侑は、まっすぐに光を見つめて、星をその手で掴んでいます。全く眩しそうな様子はありません。ただ手を伸ばして星に届いた、などの優しい表現ではなく、意地でも離さないという位、力強く掴んでいます。

ここで侑は、宇宙に行きました。息もできないくらい、夢中になる願いが見つかったからです。

12話サブタイトル「気が付けば息もできない」はここに集約されていると思います。

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「気が付けば」とあるように、息もできない状態は無意識で至っています。先ほど述べたように、海も宇宙も息ができない場所ではありますが、侑は、海に潜るときはいつも意識的に潜っていました。「これ以上はダメだ」と、我慢せざるを得ない状態でした。

でも今回は違います。
これまで、侑の独白と発せられる台詞・行動は一致していないケースが多かったですが、今回は100%侑の本心からの言葉・行動です。

この一連の描写の凄い所は、侑が陸地に足をつけたまま、宇宙にあるはずの「星=夢・願い」の象徴であるプラネタリウムを抱えている動きです。絶対に陸地(=現実)に夢を持ってくるんだという、侑の決意の強さがこれでもない位に感じられます。



また、この描写は、もう1つ意味があります。侑がプラネタリウムを持つ直前に、写真を見つめる燈子が映し出されます。

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(姉の写る写真を見つめる燈子)

光の当たり方が真逆です。侑がこよみに言ったように、燈子は「過去を基準にして未来を選択する」様子がこの1コマで伺えます。それぞれのキーアイテムに対する描き方が簡潔かつ巧みに対比されています。



●燈子がプラネタリウムに触れられなかった理由

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侑がアイスを取りに行っている間、燈子はプラネタリウムに触れようとしますが、侑が部屋に入ってきたことで未遂に終わります。ここまで述べてきたように、「プラネタリウムが持つ侑の願いは、燈子にとって受け入れられないものだから」ということがその理由です。燈子から貰ったプラネタリウムですが、もう、侑独自の想いが育っている訳ですね。


侑とプラネタリウムに関する考察は以上になります。



2.小糸「侑」について

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侑が優しい子だなあ、という感想を本項にて行います。

「侑は私のこと好きにならないでね?」と言われても、先輩には聞こえないように「ばーか」と返す侑。本当にいじらしいです。人によってはキレてもおかしくない場面です。でも、侑はキレ方が非常に理性的でした。

「自分が好きと伝える前に、先輩に変わってもらわなきゃ」と。

この想いには、侑のエゴもありますが、それと同じかそれ以上に、「先輩に自分のことを嫌いにならなくなってほしい」という願いもあるのではないかと個人的に考えています。自分の気持ち優先か燈子の気持ち優先かという問題ですね。

どちらの気持ちが強いのかは誰にも分からないですが、過去の侑の人物像から推察してみます。


・侑は自分のことでは優柔不断
→1話で入る部活に悩んでいる侑に対して、こよみが「ほんと優柔不断だなあ..」とぽつり。
→10話で菜月と買い物したとき、「侑決めるの遅い」とばっさり。

・侑は他人のことでは決断が速く、力を発揮する
→3話の応援演説
→6話の「本当は寂しいくせに!」の切り返し
→8話の朱里の送り出し(自分は傘を持っていないのに)
→10話菜月「誘われて入ったソフト部であれだけ頑張れるのが侑のすごいところ」

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(中学時代の侑。勝っても負けても泣かなかった)

・小糸「侑」という名前

【侑】の意味は?名付けのポイントを徹底解説! | 一期一名(いちごいちな)
「侑」は「勧める」「助ける」の意味をもつ漢字です。


名前の意味にあるように「侑」という漢字には「助ける」という意味があるそうです。
燈子を変える=燈子を助けるということには直結しませんが、それでも侑は燈子のことを何とかしたいと考えているはずです。

そのため、侑はやっぱり自分の気持ちよりも、燈子のためを想って行動しているのではないかと、個人的には感じています。

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こよみと話すために、侑が家から飛び出して走っていくシーンは、とても感動しました。あれだけ言葉を閉じ込められているのに、我慢ばっかさせられているのに、それでも先輩のために夢中で何とかしようと走る侑の健気さに胸打たれました。

燈子にきみが好きになった女の子はほんと優しい子なんだからほんと大切にしてあげて、マジで。と言いたいです。





●踏切での光について

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最後に、踏切場面での光の演出について言及して、本考察を終えたいと思います。

合宿からの帰宅途中の踏切で、燈子は侑に「どうする?」と問いかけて、侑は「待ちましょうか?」と答えました。侑は燈子を見つめています。その直後、電車が通過して、2人に光がかかります。

・言葉のやり取りについて
→侑が「待ちましょうか」と言ったことから、侑の方が燈子と一緒に帰る時間を惜しんでいた、と捉えています。また、この段階では侑は燈子から、燈子の悩みについて何も話を聞かされていないため、燈子の方から切り出せる時間を用意したかったのかもしれません。

・光の演出
→この光は、OPで発せられている侑のプラネタリウムと同じ光源に見えます。

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(OP/侑が持つプラネタリウムから発せられる光)

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(2人の間を通過する光)

本記事で繰り返し述べているように、この光は<特別>なものです。それを2人が平等に受けていることから、「2人とも、もう特別を知っている」ということが分かります。侑も眩しそうな様子はありません。

また、2話と同じく時が止まるような演出があり、そこから2人のこれまでの思い出深い出来事が次々に映し出されます。これらの演出を電車を用いて行ったことは、以下3点の意図を感じます。

①2人の最初のキスがこの踏切だったため、重要な出発点であること。
②2人のこれまで軌跡(=ある人や物事がたどってきた跡)と、軌跡(=車輪の通った跡)をかけていること。
③電車が通り過ぎるのはほんの一瞬であり、あっという間に過ぎ去ってしまうこと。すぐに過去になってしまうこと。


というように、鮮やかながら非常に切ないシーンに感じました。2人のこれまでの軌跡の振り返りも感じることができ、最終回前の1話を印象付ける素晴らしい一幕でした。



考察については、以上になります。いよいよ、アニメの最終回も残すところあと1話までやってきました。侑の願いを受け脚本はどう変わるのか、燈子の反応など、最終回も目が離せないものになりそうです・・・!!






3.ブログ紹介

www.anime-kousatsu.com
いつもご紹介させて頂いている、ゆっちーさんの記事です。
3話時点の考察から、「まだ大気圏」→「気が付けば息もできない」を予見されています。原作未読なのに恐ろしいまでの先読みの精度です。また、十字路に関する考察が、自分には全くない発想だったのでとても楽しく読むことができました。

yagakimi.hatenablog.jp

こちらもいつもご紹介させて頂いているygkmさんのブログです。侑のいる場所を、「宇宙」・「海中」と表現し、それを「呼吸ができない場所」「身動きができない場所」と表現されていた部分は、自分ととても似た解釈だったので、とても楽しみながら見ることができました。ygkmさんも十字路の部分に着目されていて、それを「十字架」に見立てて解釈されていた部分が驚きでした。

ゆっちーさん・ygkmさんの記事いずれも、最終回前ということでとても濃密な内容になっていますので、まだ読まれていない方は是非ご覧ください!!

ブログ紹介は以上です。



4.BD/DVD1巻感想

先日発売されたBD/DVD1巻の感想を簡単に。

◆BD、画質めっちゃ綺麗でした。当然なのかもしれませんが、放送時より綺麗に見えて、特に背景や夕陽の光などが映えているように感じました。

◆絵コンテがすごい。加藤監督が書いた絵コンテが、第1話分まるまる掲載された絵コンテがあるのですが、これの情報量がすごかったです。少しだけ話をしますと、冒頭でタイトルが出る場面で監督のメモに「タイトルにアニメーションつくと嬉しい」と一言要望メモみたいのがあるのですが、実際はあんな綺麗なモーションがついて(最後にBloom into youが浮かぶのもお洒落)、監督の要望を超えてくるスタッフの方もすごいなと。

あと絵コンテは秒数とかも刻み込まれたりして、絵も巧いし、監督って仕事はなんでもできるスーパーマンみたいな人なんだなというのが分かりました。

◆スタッフコメンタリー
こちらも加藤監督と、原作者の仲谷先生がコメントしてくれているものがあるのですが、個人的には仲谷先生の肉声が聞きたくて、BD開封後第3話コメンタリーを真っ先に見た次第です(笑)先生の印象は作品通りロジカルな雰囲気が伝わってきました。最初はとても緊張していたかと思いますが、その後は普通に話されていて心臓つよと思いました。加藤監督との信頼関係もすごくあるんだなーということが伺えるコメンタリーでした。

 

見る度に気付かされる部分が沢山あったり、「あの人の考察はここに繋がっているのか」という、他の方の考察を読んだからこそ分かる部分もあったりと、今回考察を行うに当たっても非常に役立つ部分がありました。特に1話~3話というのは伏線も多いですし!!

 

この冬のおともに、是非ともオススメしたいです。


ではでは、今回は以上となります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。次回は最後になりますが、よろしくお願いします!!

 

 

 

 

やがて君になる 公式コミックアンソロジー (電撃コミックスNEXT)

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やがて君になる 11話 感想 考察 ~錯綜する視線/沈黙の先にある感情とは~

 

 

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(なんともない なんともない 先輩に見られるのも 先輩を見るのも ------小糸侑)


こんにちわ。づかと申します。

きゃっきゃうふふの合宿前半から、後半はHU〇TER×HU〇TERのような苛烈な心理戦を見せられたようなやが君11話でした。そのギャップはあまりにもタフでしたが、今回も感想&考察を述べてまいります。

※本記事はアニメ『やがて君になる』11話までのネタバレを含みます。ご一読の際は、11話まで視聴の上でご覧ください。なお、筆者は原作既読勢ですが、本記事に原作のネタバレはありません。


やがて君になる』11話「三角形の重心/導火」


【目次】
1.
三角形の重心を考察する

2.七海「澪」と七海「燈」子

3.視線から読み解く侑/燈子の心情

4.ブログ紹介&感想




1.三角形の重心を考察する

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二泊三日の合宿が始まり、いよいよ生徒会劇の練習が本格的に始まりました。Aパートでは、日中の練習・夜はカレーを皆で食べてお風呂にも入る。いかにも高校生らしい健全な合宿風景を見ることができました。今回は夜、燈子たち女子3人が就寝する場面から考察を始めていきます。



まず、本考察全体を通じて軸に据えたいものが「視線」という要素です。
・自分→他人
・他人→自分
・他人→他人
・自分→自分
このように誰かを見る行為や目線を、矢印で表すようなイメージをしていただければと思います。

その上でサブタイトルにもなっている「三角形の重心」から見ていきますが、3人が就寝する場面は特にその視線の動きが顕著に示されています。

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物語通りに視線を追っていきましょう。

①沙弥香から燈子への視線

②燈子から侑への視線

③侑から燈子への視線

簡明に、それぞれが好きな人に視線を送っていることが分かります。


このあと重要なことが、3人とも、一度送った視線を別の方向へ向けているという点です。

①沙弥香から燈子への視線→「もし2人きりだったら我慢できたかしら」(燈子からやや逆側へ視線移動)

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②燈子から侑への視線→「もし2人きりだったら危ういところだった」(侑から視線を外し真上を向く)

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③侑から燈子への視線→「佐伯先輩がいるこの状況じゃ悩む余地ないし」(燈子から逆側へ勢いよく身体ごと移動)

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図に起こすとこんなイメージになります。

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ともすれば燈子に荷重がかかりすぎて(=モテすぎて)、あっという間に重心が崩れて倒れてしまいそうですが、全員が全員、理性的な行動をとりバランスを保つことができました。それを示したものが次図です。

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侑が最もリアクションが大きかったことは、侑本来の割り切りの良さ・未練がましくない性格を表しているのかもしれません。燈子においては、反対側に視線の逃げ場のある侑・沙弥香と異なり、視線キャンセルした後の引き先がありません。そのため、燈子は必然的に真上を見ることしかできなくなります。横軸と縦軸の関係でみても、燈子だけが縦軸であり虚空を眺めている(後ろは自分だけ、前にも誰もいない=好きな侑は幻想的なもの)と深読みできなくもありません。


この絶妙な均衡の保ち方、本当に「三人でよかった」...、という感想以外に浮かびません。以上が、サブタイトル「三角形の重心」の考察です。





2.七海「澪」と七海「燈」子


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(澪と七海さんはあんまり似てないな -----市ヶ谷知雪)


合宿2日目、保たれた均衡はあっという間に崩壊します。遠見東高校のOBであり、燈子の姉・澪と同級生だった市ヶ谷さんの登場によって。

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演劇の打ち合わせを行う過程で、燈子は市ヶ谷さんの「生徒会長はもっと人を動かすものだと思ったよ」という一言に疑問を感じ、見送り際に「姉はどんな生徒会長だったのか?」と尋ねます。


そこからの会話の一部始終は、燈子にとって、7年間の努力の根底を揺るがす強烈なものでした。
・あいつには散々こき使われた
・仕事は任せきり
・その癖おいしいところは決める
・宿題の手伝いまでした。大変だったけど面白かった
これは市ヶ谷さんから見た澪の人物像です。

「なんでも自分で完璧にこなせて 憧れだった」という燈子のイメージする人物像とはあまりにかけ離れています。

市ヶ谷さんから澪の話を聞くたびに、燈子が抱いていた姉のイメージが、海の潮が急速に引いていくような、足元が崩れていくような不安を、見ている自分も感じる場面でした。




ここから考察したい点は大きく分けて3つです。

●顔の見えない澪

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生徒会室で市ヶ谷さん達と話す澪は、顔が見えません。11話直前の10話Cパートでは、燈子とジャンケンしていた澪の顔がはっきり映し出されているので、何かしらの意図があることが予想されます。

色々考えたのですが、筆者は、「市ヶ谷さん本人の回想かつ、市ヶ谷さんから話を聞いた燈子のイメージ」が上記の画像なのだと結論付けました。旧生徒会の他のメンバーの顔も燈子は7年前に見ています(下記画像参照)。澪の顔が見えないのは、市ヶ谷さんから聞く澪の顔を、燈子が全くイメージできないからだと考えます。

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セミとヒマワリ(向日葵)

続いて、背景から考察してみます。

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セミ
市ヶ谷さんとの会話の場面、ヒグラシが鳴いていました。しかし、その直後映し出されていたセミはヒグラシではありません(ヒグラシはミンミンゼミのように羽が透明)。ぱっと見では、特定できない種類のセミのように見えます。飛び立った鳴き声でようやくアブラゼミかな、と想像できる程度の情報でしたが、この場面も、特定できない澪の人物像とセミを被せていた演出かもしれません。



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■ヒマワリ(向日葵)

注目したいのはその花の向いている方向です。通常、太陽の方角に向かって一様に同じ方向を向くのが自然ですが、このヒマワリは向いている方向・大きさともにバラバラです。このヒマワリは見ている人の立ち位置により見え方が全然異なります。ちょうど、市ヶ谷さんと燈子の、澪への見方が大きく異なったように。

ちなみに、ヒマワリ(向日葵)の花言葉「憧れ・あなただけを見つめる」なので、前者は燈子から見た姉の表現とも噛み合います。また、後者は後述していますが、侑が燈子を見つめ続ける視線ともリンクしている可能性があります。



●七海「澪」と七海「燈」子

最後に、本項の表題にもしているこの姉妹の名前について。



ツイッターでもあげましたが、この2人は本当に正反対な名前の構成になっています。もう少し詳しく述べると、「澪」のさんずいは水を編にしたものであり、つくりには「雨」の文字が入っています。七海という姓を受けて、その流れに沿ったこれ以上ない自然な構成の名前です。余談ですが、つくりのもう一つの「令」の文字は、小糸「怜」の中にもあるため、「令」は姉共通の文字なのかもしれません。


一方の燈子は、火が登ると書いて「燈」です。海の流れからはそぐわない矛盾した構成になっており、名前からも、この姉妹が市ヶ谷さんの言うように「全く似ていない」という暗示がなされていることが伺えます。

余談ですが、火が登るは「ひがのぼる=日が昇る」ともかかっているのではと、(現時点では妄想しかできませんが)考えています。海から日が昇る=Sunrise(サンライズ)であり、アニメ第9話での挿入歌である『rise』の冒頭の歌詞でもあります。話の本筋からは外れましたが、このような見方も今後に役立つかもしれないので、文として残させていただきます。






3.視線から読み解く侑/燈子の心情

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Bパートラスト、花火の部分を中心に考察します。この部分が、今回のお話で最も難解であり、苛烈な心理戦と評した部分になります。考察もまとまりに欠ける部分があるかもしれませんが、ご容赦ください。



●「沙弥香ならいいよ」の真意


視線の話は、特に侑に関するものを中心に述べたいのですが、その前に沙弥香と燈子の話をまとめます。

「市ヶ谷さんと何か話していたの?」
「市ヶ谷さん・・・」
「市ヶ谷さんって生徒会のOBだったの?」

これは、沙弥香が燈子に対して踏み込んだ際のきっかけとなった言葉です。3回も繰り返し名前を呼んでいる通り、沙弥香が意を決して発した言葉であること、市ヶ谷さんが大きなキーパーソンだということが分かります。沙弥香がなぜそのことを知ったかというのは、Aパートラストで、市ヶ谷さんと燈子の会話を聞いていたことによります。

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この会話を聞いていたことが、侑の持っていない、沙弥香にとって大きなアドバンテージとなりました。この会話を聞いていたからこそ、市ヶ谷さんを見送る際、燈子が追いかけた場面でも、侑と違い沙弥香は驚いた表情を見せません。燈子の様子が昨日までと違うことにも、推察することができる立場にありました。

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線香花火の場面に戻り、沙弥香の問いを受けて、燈子の目は8話で見せた様な瞳になります。

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「踏み込んできた」と察知するかのような瞳。

「燈子のお姉さんの話・・?」と続ける沙弥香。

これに対し、燈子は拒絶も沈黙することもなく、率直に自分の気持ちを話します。そして「沙弥香ならいいよ」と踏み込みを許すような発言をします。

ここの燈子の真意を理解することは困難ですが、思いつく理由は、
◆燈子は沙弥香に対して恋愛感情を持っていない。が、一番の友として信頼している。
◆自分もそうであるように、沙弥香も自分のことを一番の友として見ていると思っている。
◆沙弥香は自分に好意を抱いているとは思っていない。

ゆえに、もっとも信頼のおける、いわばビジネスパートナーのような存在である沙弥香に対して、その問いに応えた、と見ています。裏を返すと沙弥香に対する恋愛的感情が一切ないところが、沙弥香視点では非常に切ないところです。その後の沙弥香の頬を赤くした表情を見ると余計に・・。

 

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●導火して灯されたものは・・?

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燈子と沙弥香の会話を踏まえて、ここからは侑視点を中心で考察を続けます。

11話の侑はこれまでの話数と比較して非常にイレギュラーなものでした。

◆Bパートにおいて侑の独白(モノローグ)が一切ない
◆11話通して燈子と2人きりの場面が一切ない

特に前者、独白がないことにより、11話の解釈の困難性がより高まっていると感じます。独白がない分、解釈はそれ以外の動作に頼らざるを得ません。筆者が頼っているものはやはり視線であり、花火の際の侑の視線は特にしっかりと追うべきものと考えています。


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花火ですよ、と燈子に声をかける際の侑。とても不安そうな表情をしています。

なぜここまで不安そうな表情をしているかは、Bパートを侑視点で振り返ると見えてきます。

まず何よりも、侑は燈子と市ヶ谷さんの関係を把握していません。沙弥香と決定的に異なるものがここの情報の差です。だから市ヶ谷さんを見送った場面でも侑は「先輩!」と声をあげ驚いています。ほかにも、打ち合わせの際にも、侑の視線は燈子を追い続けいている描写があります。

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(分かりにくいですが左奥から侑が燈子を見つめています)

・市ヶ谷さんが来てから先輩の様子が変だ
・市ヶ谷さんを追いかけてどんな話をしたんだろう
・夜になったら、その話をわたしにはしてくれるかもしれない

と、おそらく、侑はこのレベルの想像しかできなかったと思います。



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不安そうな侑を「ああ 優しいなあ」と見つめる燈子。

11話では唯一、2人の目が合うシーンではないでしょうか。ポイントは目の震えです。侑が燈子を見るとき、燈子が侑を見るとき、ともに目が震えていることが分かります。この目の揺らぎは好意を抱いている相手にだけ見せる視線の可能性が高いです(この演出が11話限定か否かは不明)。


そして燈子の独白はこう続きます。

「甘えてしまいたい だけどどこまで許されるんだろう その優しさを使い尽くしてしまうのが怖い」

市ヶ谷さんの言葉を受けて、燈子は精神的に揺らいでいます。姉のことが強く頭に蘇ってきている可能性が高いです。もしかしたら、「私は姉に甘え過ぎた。私が姉の優しさを使い切ってしまったから、姉は死んでしまったかもしれない。私が悪いんだ。」という自責の念を抱いているかもしれません。だから、侑に甘えたいけれども甘えることができない。



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だけどその想いは、隣にいる侑は知る由もありません。

「すごいいっぱいだね花火 どれにしようかな」

と、当たり障りのない燈子の発言を心配そうに眺める侑。

この一連の表情が、個人的には11話のハイライトだと強く捉えています。本当に繊細な表情です。カットの枚数も相当じゃないかと。

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・夜になっても、先輩は先輩のままだ。絶対何かあったのに。
・弱い先輩を見せても大丈夫なのに。
・でも、わたしからは何もできない。何も言えない。

そんな侑の独白が聞こえてくるようなとても寂しそうな表情が、非常に繊細に描かれています。10話のドーナッツ屋で「わたしからは何もできない」の独白があったように、侑は燈子から好かれているがゆえに、何もできません。ここで侑が心配していることを燈子が気づいてしまうと、燈子は離れて行ってしまうからです。

「なんともない なんともない 先輩に見られるのも 先輩を見るのも なんともない」

Aパートでは、侑の独白がいくつかありました。合宿1日目がつつがなく進んでいること、そしてお風呂場でのこの言葉。Aパートでの侑の独白の多さが、Bパートでの沈黙をより際立たせています。Bパートで先輩を見る侑は、とても「なんともない」様子ではないのだから。



花火の場面は続きます。

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1年生3人で花火をやっていますが、この時も侑の目は揺らいでいます。上述した通り燈子は名前に「火」が入っているので、花火に燈子をなぞらえて、それに魅せられている侑の描写かもしれません。

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一方で燈子は、侑のその様子を後ろから見ています。この時の燈子の目も揺らいでいます。本記事タイトルにした「錯綜する視線」というのは、この花火の様子から採用した次第です。視線も会話も、思うように交わってはくれません。この後、沙弥香が燈子の隣に来るわけですが、瞳の揺らぎはその瞬間止まるのがなんとも皮肉です。


沙弥香に対しては好意を持っていないがゆえに受け入れて、侑に対しては好意を持っているがゆえに受け入れない。一連のものすごい描写です。


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そして11話は最後の場面に。

燈子と沙弥香の視線は、ともに空を見上げています。

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それを見る侑の表情です。

先ほどの寂しそうな、不安そうな表情でもなく、もうその表情からはどの感情も想像することができません。ただただ、燈子に視線を送るばかりです。あれだけ丁寧に描いていた侑の表情が消え、その分、心の奥底ではどれだけ複雑な感情が渦を巻いているのでしょうか。圧巻の心理描写が続いた花火のシーンでした。

ここで「導火」というサブタイトルを考えますが、灯されたものは侑の燈子への「嫉妬」の火だと捉えて、本考察を終えたいと思います。嫉妬というと安易な発想かもしれませんが、ここまで考えてみて納得できるものが嫉妬しか浮かびませんでした。うーん11話難しいです、本当に!!

以上で11話の考察を終わります。



4.ブログ紹介&感想

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まずはいつもご紹介させて頂いているゆっちーさんの記事です。セミの描写から、燈子が絶望の淵に立つようなイメージを丁寧に考察されています。また、「沙弥香ならいいよ」への解釈に対するアプローチが、自分とかなり似ており、個人的にとても面白かったです。また、コメント欄の抜粋部分も非常に興味深い内容でした。

yagakimi.hatenablog.jp

続いてygkmさんの記事をご紹介させていただきます。燈子の落ち込んだ姿を見て踏み込もうとした沙弥香の心情を、過去の沙弥香の経験などからとても丁寧に考察されています。侑とも似た優しさを持っている沙弥香、燈子は優しい人に囲まれて幸せですね。余談ですが、ゆっちーさんとygkmさんの記事のサムネイルが、見事に燈子と沙弥香で向き合っていることが素晴らしい息の合い方です(笑)自分は侑中心の記事だったので、うまいことバランスが取れました。

記事のご紹介は以上です。


それでは、ここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございました。アニメも残すところあと2話までやってきました。自分としてはこのような考察記事を毎週アップすることは初めての試みなのですが、読んでくださる方がいらっしゃって、またコメントもいただくことができ、本当にうれしく思います。

ブログを書くことで、よりやが君のアニメを楽しく見ることができています。ここまできたら残り2話も頑張っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。ではでは!!


ツイッターでも実況とかプチ考察してるので宜しくお願いします!

ID:@duka_yagakimi


 

 

やがて君になる(4) (電撃コミックスNEXT)

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やがて君になる 公式コミックアンソロジー (電撃コミックスNEXT)

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やがて君になる 10話 感想 考察 ~届かない想いばかり積み重なっていく~

 

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(白紙の短冊)


こんにちは。づかと申します。

やが君10話は、静かなタフ回でしたが、今回も感想&考察を述べてまいります。

※本記事はアニメ『やがて君になる』10話までのネタバレを含みます。ご一読の際は、10話を視聴の上でご覧ください。なお、筆者は原作既読勢ですが、本記事に原作のネタバレはありません。


やがて君になる』10話「私未満/昼の星/逃げ水」

【目次】
1.入道雲と工事現場
2.昼の星は見えない。だけど確かにそこにある。
3.ドーナッツと、シャボン玉と、紫陽花
4.クリオネゲーム
5.逃げ水
6.燈子のキーアイテム
7.望みは、望まないこと
8.ブログ紹介




1.入道雲と工事現場



体育祭も終わり、季節は夏に変わろうとしています。生徒会の劇もいよいよ動き始めて、新章開始!合宿もやります!と、今後の気運が高まるようなお話でした。一方で、侑と燈子の関係は、体育祭を経てどのように変わりつつあるか?その点を中心に考察してまいります。

 

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冒頭、侑は燈子に、完成した劇の脚本を渡しに行きます。そのとき、侑は距離を置く訳ですが、はぐらかしの言葉に「暑いですよね」を使います。

ここでの演出の意図として読み取れることは、侑が暑いというのもうなずける、青空の描写をすることが1つ。もう1つは、【燈子の恋心の順調な成長と、侑の恋心の発展途上】を表していると捉えています。


まず、画面中央に、燈子と重なるように入道雲が写っています。入道雲は強い上昇気流によって発達した雲であり、大きさは10kmにもなるといいます。

そして、画面左側に、侑と重なるように「工事中の建物」が写っています。建物はいくつもあり、そのどれもが完成した状態とは言えなさそうです。

入道雲は綺麗に立ち昇る1つだけであり、建物はいくつもあります。
筆者は、入道雲を迷いなくまっすぐに成長し続ける燈子の恋心を指し、工事中の建物はどれも未完成な侑の恋心と捉えています。次の画像がより顕著なのですが、


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入道雲=燈子の気持ちを遮るものはありません。
一方で建物=侑の気持ちは、鉄の柵により、まるで檻に閉じ込められたかのように、空へと昇ることができていません。このように10話では、侑の気持ちが「沢山生まれる、でも、表には出てこない」という描写が随所に見られます。

なお、入道雲積乱雲とも言われ、ときには雷や嵐、大雨をもたらす存在です。この場面では、綺麗な青空に映える夏の風物詩として描かれていますが、そんな一面も含んでいるものが入道雲です。(嵐を呼ぶ女、七海燈子なんだかク○ヨンし○ちゃんの映画タイトルみたい・・・








2.昼の星は見えない。だけど確かにそこにある。

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10話のサブタイトルにもなっている「昼の星」について。通常、星は夜しか目にすることはできません。星が放つの光よりも、太陽が放つ光の方が大きいからです。でも、星は昼であっても光を生み出し続けています。本当はそこにあるんだけど、目には見えないもの。それが昼の星です。


笹の葉に、結局侑は願い事を書くことはできませんでした。侑の、

「願い事はあるはずだけど奥のほうにつっかえててうまく言葉にならない」

という独白にあるように。

侑は何を願いたかったのか、自分なりに考えましたが、この部分は本記事の最後に述べたいと思います。





3.ドーナッツと、シャボン玉と、紫陽花


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期末テスト対策のため、侑と燈子はお店で勉強をします。毎回数学を教えてもらっているので、侑は本当に数学が苦手なのですね(笑)

明確な演出的な描写(入道雲のような暗喩ではなく、2話や9話における水の表現を用いた直接的な演出)は、10話においてはこの部分だけだったように感じます。


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侑と燈子が会話をするたびに、シャボン玉のような黄色い泡が浮かびます。シャボン玉は何度も写りますが、その度に位置や揺れ方が異なっています。

燈子「侑に嫌われたくないから」

侑「べつにそんなの」

(ここでシャボン玉が消える)

侑「・・まあ いいことだと思いますけど」


この場面が特に決定的ですが、侑のシャボン玉は、心の中でいくつも浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返しているのでしょう。そして、もう一つ注目したい点があります。それはシャボン玉を構成している色なのですが、シャボン玉本体が黄色・背景が淡いが映し出されています。

8話で考察した「紫陽花」が、この場面でも活かされていると考えます。
※紫陽花に関する考察はこちらをご参照ください。
やがて君になる 8話 感想 考察 ~日常から切り離された燈子の世界~ - 三十路会社員のレート奮闘記



黄色(白)の紫陽花の花言葉は「寛容」でしたが、ここで重要なことは花言葉ではなく紫陽花の咲く順番です。紫陽花が移り変わる花の色は、①黄色(白)→②赤(ピンク)→③です。黄色(白)が、最も最初に色づくということに注目しました。そのため、ここでは侑の心に芽生え始めたばかりのものが、浮かんでは消えていることが表現されているのではないでしょうか。









4.クリオネゲーム


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まさか侑がやってる3DSにも演出ぶっ込んでくるとは思わなんだ。


画像小さいため見辛いかと思いますが、筆者が読み取った部分はこうです。
・これはクリオネの育成ゲーム?
クリオネのリボンは黄色だから、クリオネが侑自身という可能性が高い
・パラメーターがある。
 上画面のクリオネは、
 おなか■■■■ きげん★★★ 
 60パーセントくらい
 下画面のクリオネは、
 おなか■■■   きげん★★     
 40パーセントくらい
・「交代」コマンドがある
・下画面のクリオネは、「不思議そうにあなたを見つめています」との記載

※分かりにくいですが■■■の部分は、おそらくおなかが満たされると■に色が入るのではと考えています(即ちこの状態はおなかが全く満たされていない、ゼロの状態だと解釈しています)

www.channel-nets.com



マークの意味や「不思議そうに見つめている」の言葉の意味、クリオネの生態(飢餓状態でも1年は生存可能/雌雄同体)から当てはめるだけでも記事が1本書けそうですが、今回は以下の2点だけ抑えたいと思います。

①個体が2つ(
以上)いるが、いずれもパラメーターはいまひとつ
②いずれのクリオネもお腹は減っているのに、機嫌は良い

①については、これまで述べてきたとおり、侑から沢山生まれてくるものの内の1つ、として捉えればよさそうです。②については後述します。





5.逃げ水


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Bパートサブタイトル、逃げ水について、

逃げ水とは、大気の異常屈折現象の一つ。晴天の日に道路面などが異常な高温になると、それに接する空気が暖められ、地上1mくらいの間に急激な温度差が起こり、このとき地面付近に動く不明瞭な倒立像がみられる。

逃げ水(にげみず)とは - コトバンク

 


これは実際に現象として起きる逃げ水の解説ですが、要するに蜃気楼の一種みたいですね。ポイントは温度差だと考えます。Bパートラスト、侑と燈子の電話での会話は、非常に温度差があるものでした。

燈子「侑は私が何をしてもしなくても 
   きっと本当のところで興味なんかないんだ 
   さっきまでのイライラが嘘みたいに
   溶けてく」

侑「先輩と話すとざわざわする」

との独白でのやり取りに示されるように。

ここまで、「工事中の建物」・「白紙の短冊」・「浮かんでは消えるシャボン玉」のように、侑の伝えたいこと・生まれてきた想いたちは、表には出てきませんでした。この電話でも、それらが摩擦となり、侑の心をざわつかせます。

しかし、侑はこうも言っています。

侑「先輩と話すとざわざわする 菜月が言ったとおりだ余裕なんてない だけど嫌な感じじゃない

と。ここでまさかのクリオネの話につながるのですが、【お腹は減っている。だけど、機嫌は良い】と同じ状態と言えます。伝えたい想いは言葉にできずとも、好きな人の隣で同じ時間を過ごし、離れていても電話で話すことができる。それは幸せなことだから、侑は笑顔を見せてくれているのだと思います。


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この電話の場面、筆者は作中でもとても好きなシーンです。
これは完全な感想なのですが、
・侑の赤ちゃんみたいに身体を折りたたみながら、枕を抱きかかえる仕草!
・「どうでもよくなんかないですよ」ではなく「どうでもよくなんかないよ」と敬語でなくなる瞬間!
この辺りの侑の健気さ・愛おしさは言葉にすることができません。胸が締めつけられるような何とも言えない気持ちになります。今回も、侑役の高田さんの演技が素晴らしかったです。






6.燈子のキーアイテム

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アバンで燈子が夢に見ていた内容が、Cパートで明かされます。燈子の短冊への願い事は「生徒会劇が成功しますように」という描写を踏まえることで、「私はお姉ちゃんになるんだ」という燈子の決意が分かりやすいものになっています。

ここで写真立てが登場することで、OPで燈子が持っていたものがそれだったことが明らかになります。

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燈子のキーアイテムは、お姉さんの写る写真立てでした。OPではその後、写真立てを置いたまま(=お姉さんを置いたまま)燈子が立ち去ることもポイントです。






7.望みは、望まないこと

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「いつまでも あなたの隣にいられますように」

 


最後に、短冊の願い事の部分に触れて考察を終えます。上記で述べたとおり、侑が願いたかったことは、沢山の想いは浮かんでくるものの、言葉にはできませんでした。そして、結果として白紙の短冊を飾ることになります。

侑がそれを選択した以上、正解はそれ以外にありえません。

なのでここからは二次的な妄想になりますが、自分としては黒字で書いたことが侑の願いではないかと思いました。この部分は視聴者全員が考えられる自由な部分であり、昨今ネットで話題になっているエモ帯(※原作漫画のエモい帯のこと。原作者仲谷先生と楠編集が毎回案を出し合っている)ならぬエモ短冊があってもよいのかなと思いました。




それでは、今回の考察は以上になります。

今回は、ほかの方の考察を読まずに予備知識なしで記事を書くということに臨んでみました(原作知識はありますが)。

このあと、いろいろなブログやツイッター等で考察・感想を見れることが楽しみです^^

 

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

ではでは!


8.ブログ紹介

www.anime-kousatsu.com

 

いつもご紹介させて頂いているゆっちーさんの記事から。
「もうどうでもよくなんかないよ」の言葉の考察が素晴らしかったです。
この部分について自分はかなり感情的に見てしまったので、考察をする余裕がなかったのですが、流石です。「もう」を入れることでさらに侑のいじらしい気持ちが伝わってきます。


yagakimi.hatenablog.jp

こちらも、いつもご紹介させて頂いているygkmさんの記事です。
どれも深い考察ですが、特にドーナッツへの考察(残った味はなにか)と、サブタイトルへの考察が圧巻の内容でした。昼の星⇔逃げ水を根拠を交えながら、侑と燈子の気持ちになぞらえる部分に、本当にはっとさせられる記事でした。

ご紹介は以上になります。








 

 

 

 

 

 

やがて君になる 9話 感想 考察 ~身が千切れるような侑の心情~

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 (何が起きるのか、まだ何も知らない体育倉庫氏)

 

 

こんにちは。づかと申します。

やが君9話は、過去最高にタフな回となりましたが、今回も感想&考察を述べていきたいと思います。


※本記事はアニメ『やがて君になる』9話までのネタバレを含みます。ご一読の際は、9話を視聴の上でご覧ください。筆者は原則既読勢です。本記事には一部原作の場面を挿入しています(挿入内容はアニメ放送時の原作分までです。アニメ放送以降の原作ネタバレはありません)。



やがて君になる』9話「位置について/号砲は聞こえない」

【目次】
1.五感から読み解く侑の心理描写
2.超えてはいけないラインを超えてしまうと・・?
3.ブログ紹介




1.五感から読み解く侑の心理描写


9話を視聴されたみなさま、お疲れ様でした。
1日経っても、衝撃冷めやらぬ状況ではありますが、9話においても素晴らしい演出の数々がありましたので、考察していきたいと思います。

 




●人が恋に落ちる瞬間

まず、とんでもないことが起こった体育倉庫でのお話の前に、リレーの話を。

リレーの場面は、倉庫のシーンと合わせて、9話の話の核でした。
生徒会のチームワークを感じ、侑と沙弥香、沙弥香と燈子の絆を感じ、またライバルとの戦いもあり、これぞ体育祭の青春!が詰まった素晴らしいシーンでした。


その中で最も印象的なのは、燈子に見惚れる侑でした。この場面を細かく見ていきます。

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走り抜ける燈子を見る侑。
その視界からは、すこしずつ周りの走者や応援している人たちは消えて、侑はただただ燈子を追い続けます。注目すべきは、

侑は燈子のゴールの瞬間を見届けていない

ということです。

 

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後ろの堂島くんや他の応援者と侑の目線は、明らかにズレています。なぜ燈子を追っていたはずなのに、見届けられなかったのか?

いきなりの結論となりますが、それはこの瞬間に、
侑が燈子のことを完全に好きになったから(特別を手に入れた)だと捉えています。


これは、誰かを好きになること・特別を知らなかった侑にとって、初めての事態です。

自身の内から湧き上った感情が一体なんなのか、呆然としてしまい、侑は燈子を見届けることができませんでした。また、「ゴール」とは文字通り「物事の終わり」と直接的につながっています。侑の恋は、今この瞬間から始まっています。ゴールとはもっともかけ離れた立ち位置にいます。そのため、「リレーが終わったこと」・「自分たちが負けたこと」を侑が認知していない事は妥当な帰結と言えます。

※ここで、サブタイトル「位置について」が、侑がスタートラインに立ったこと、同じく「号砲は聞こえない」が、ゴールの音を聞いていないこと、をそれぞれ回収しています。「号砲は聞こえない」についてはもう1つありますが、そちらは後述します。



ホワイトアウト(共通する侑と沙弥香)

 

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(走る燈子を見つめる侑)

侑の背景が完全にホワイトアウトする直前、侑は燈子との出会いからの出来事を思い出しています。手に触れたこと(触覚)・見つめあったこと(視覚)・キスをしたこと(味覚)の順番です。声(聴覚)と匂い(嗅覚)の描写がなかった点は後述。



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(7話ラスト。「だからこれからも頼むよ沙弥香」と燈子に言われた沙弥香)

一方の沙弥香。
ホワイトアウトは、人が恋に落ちる瞬間を表しているのかもしれません。


ちなみに、いずれの場面も燈子は前を向いています

沙弥香が燈子のことを好きなところを「私より前を向いてくれるところ」と言っていました。

侑が今回見惚れたのは、リレーで、燈子が全力疾走している姿です。前を向く姿勢として、これ以上のものはありません。

 

表舞台の燈子はすごい!
七海燈子は横顔で落とす!すごい!




●体育倉庫にて①

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いよいよ体育倉庫の場面。
先ほどの、五感の描写がここに繋がってきます。

キスをしている間の、侑の独白はこうです。

「見返りのいらない好意を与えられること 
 優しくされること

 さらさらの髪や長いまつげ いいにおい 
 柔らかいこと

 それらを心地いいと感じるのは 
 手放したくないと思うのは

 ただの当たり前で 特別なんかじゃないはず
 心臓の音がする 
 ・・・私のじゃないな 先輩の音だ

 だってこれじゃ 速すぎるから」

侑は燈子から、これまでにないほどの好意を与えられます。それを侑は存分に受け入れますが、唯一聴覚(=心臓の音)だけは拒みます。※嗅覚は上記では触れられていませんでしたが、ここでは「いいにおい」として受け入れています。

2度目の「号砲は聞こえない」はここにかかってきます。ここでの号砲は侑の心臓の音を意味しています。

1度目の号砲は、燈子によりもたらされたものであり、侑は号砲を本当に認識していません。2度目は、意図的に聞こえない「振り」をしています。ほかの感覚は受け入れても、どれか1つの感覚だけでも拒んでいないと、超えてはいけないラインを超えてしまったのでしょう。以下は、原作編集担当である楠さんがツイートした内容です。


 

この原作扉絵からも分かるように、
・侑が自分で耳を塞ぐ
・(おそらく)燈子によって塞がれている
二重に塞がれていることが分かります。

まず、このタイトル・扉絵の原作が凄すぎる。圧倒的な構成力です。そして、それを補完してより分かりやすいものに落とし込んでいるアニメ。
原作:仲谷先生と編集:楠さんの対談でもあったように、これが【完全版やが君】なんですね・・!(原作に関する言及は以上です)

media.comicspace.jp



以上が、五感から読み解く侑の心情考察でした。

※余談ですが、OP曲「君にふれて」の「ふれて」が「触れて」じゃないのがエモいですね(エモいの使い方合ってるかな?)。「触れる」だけじゃ触覚だけで終わってしまう可能性があるけど、ひらがなだと色んなふれ方があると想像できる点が、エモいです。







2.超えてはいけないラインを超えてしまうと・・?


侑が言った、超えてはいけないラインを超えてしまうとどうなってしまうのか?
また、それを超えなかったことで生じたものを考えてみました。

それを考えるに辺り、「波」にという概念をキーワードにしました。



●水と波

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場面を槇くんと侑の休憩に戻します。
ここでは、侑が水の中にいる描写があります。

1話では、侑はもっと深い場所にいました。水の色が淡くなっていることから、9話のいる侑の場所は、水中から陸に上がる直前ということが分かります。

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(1話の水中のシーン)


侑は水の中にいることは間違いありませんが、それが魚なのか、水そのものなのか、
泡なのか、その定義付けが非常に困難です。9話でペットボトル(おいしい水)を飲んでいましたが、それでもうまくイメージ付できません。

そのため、今回は「水の中を漂っているモノ」として表現します。

では、その漂うモノは波に揺られるとどうなるのか?
「波」の概念について、ここでは、EDで描写されている、糸電話の波形をイメージしてもらえればと思います。糸電話の波は、上がっては下がってを繰り返します。ブレ幅や波の大きさに差はあれど、ゆらゆらと揺れています。

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これは、一般的な自然の摂理ですが、ほとんどの波は一定の上限と下限を保って揺れるそうです。一定の幅がずれるのは、地震などの大きな地殻変動があった場合に限られます。そのような大きな出来事があった場合、その勢いはしばらく止まることはありません。これをブレイクアウトと言います(なんかかっこいい)。


それを図にしたものが下記になります。

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(図①)f:id:zuka_poke:20181201235647j:plain

(図②)

侑はこの図で示したように、1度ブレイクアウト(=海から出ている)しているのでは、と捉えています。

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それを示すのが、体育祭後、こよみ・朱里と3人で並んでいるシーンです。足元にはブルーシート(海)・目の前にはグラウンド(陸地)。

侑がブレイクアウトした瞬間は、本記事前半で述べたホワイトアウトした場面です。
そりゃあ、はじめて海から上がったら、頭真っ白になりますよね。と強引に繋げてみます。



●体育倉庫にて②


最後に、場面を再び体育倉庫に移して本記事を終えたいと思います。

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侑からのキスの直前、「ダメだ。ここを超えたらいけないことだけはわかる」と侑が独白した場面、苦しそうに侑の手が水中をもがくシーンが写ります。


本記事では先ほどのように、水中から一度あがったと表記しているので、一見矛盾しているように見えますが、これは侑が再び水中に潜った描写とも言えます。


精神は一度超えてはいけないラインを超えたが、肉体はまだ超えてはいない。肉体も超えてしまったら、もう本当に戻れないと、侑が渾身の理性でもって、水中に戻った描写であると。

その場合、侑の心の摩擦は尋常なものではありません。ブレイクアウトの場面でも示したように、一度突き抜けたモノの勢いはそう簡単には止まりません。今まで溜まっていたものが噴出してくることを、それ以上の力で押さえつけなくてはならないからです。

その時の侑の心は、上向きの矢印と下向きの矢印が交互に重なり合って、それを抑えるのに本当に必死だったことと思います。

↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓

こんな具合に。

この矢印の並びが、燈子からのキスを全身で浴びる間、無限に並ぶかのような・・。
いったいどんな拷問だ。

でも、侑は耐え抜きました。そうしないと(=超えてはいけないラインを超えること。燈子に恋心を気づかれてしまうと。)、燈子は侑から離れてしまうから。必死に自分の気持ちを抑え続けます。

よく頑張った・・・と侑の戦いを心の底から称えたいです。


「超えてはいけないラインを超えてしまうと・・?」の解釈は以上です。




3.ブログ紹介

今回も大変参考にさせていただいたブログを2つ紹介させていただきます。

www.anime-kousatsu.com

「ゆっちー」さんの記事になります。
侑がスタートラインについたこと、号砲は聞こえない、の部分が非常に分かりやすく考察されています。また、「好きを嫌がる燈子がなぜキスをご褒美としたのか?」という
問題提起をされていたことが非常に新鮮でした。自分ではまったくそこに引っ掛かりがなかったので、言われてみると確かに疑問です。自分でははっきりした答えが出ませんでした・・。


yagakimi.hatenablog.jp

こちらも、前回から引き続き紹介させていただきます、「ygkm」さんの9話感想ブログです。自分が今回、侑と水の関係から連想したことは、ygkmさんがブログ内で表現された【孤独な深海】という言葉が非常に印象的だったためです。また、槇くんと侑の会話の、開いた窓ガラスについても、するどい考察をなされています。


金曜日に本編を見て、翌日には紹介させていただいた記事のほか、さまざまな考察・感想が見られて幸せな限りです。今回は、とにかく早く更新をする!という目的で臨みました。その分もう少し考えたい所があったり、他の見所を書きたい気持ちがあるので(特に沙弥香絡み)、加筆できたらよいなと思います…!


季節も12月に入り、アニメの放送は残り4回となりました。残り1か月、精一杯やが君ライフを楽しんでいきたいと思います。

 

ここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございました。ではでは!

TwitterID:@duka_yagakimi

 

 

 

 

 

やがて君になる(6) (電撃コミックスNEXT)

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